和田アキ子さんや島田紳助さんが出演するCMで知られる「毛髪クリニック リーブ21」のオーナー社長が、自らの後継者を公募することを発表した。5~10人の候補者全員に、年収3000万円以上の報酬を保証。1年半後をメドに1人を選び、代表取締役を譲る。
応募の条件は大学卒で、大規模プロジェクトリーダーの経験者。秀でたリーダーシップとマネジメントスキルに加え、強い意志、本質を見抜く洞察力、内に秘めた強力な闘争心などを持ち、「仕事を人生の真ん中における」人材を希望している。
転職サイト含め「宣伝効果は数千万円分」
リーブ21は現在14万人近い会員を抱え、年商150億円。約800人の社員がいる。次期社長のミッションは、現在97店舗ある営業所を「少なくとも500まで」増設し、海外に進出して市場を拡大することだ。
公募の理由について、岡村勝正社長は記者会見で「社員の平均年齢が28歳と若く、マネジメントを担う人材が育っていないため」と説明したと報じられている。
このニュースに対するネットの反応には、「本当に社長を譲るのか」「単なる話題作り」など冷ややかな意見も少なくない。ブラック企業アナリストの新田龍氏も、同様の見方だ。
「後継者選びは本気なのかもしれませんが、一方で割のいい広報活動という面もあるでしょうね。求人広告だと制約がありますが、『次期社長募集!』と銘打てば、いろんなメディアがバンバン取り上げてくれる。同席した転職サイトのビズリーチを含め、数千万円分のPR効果があったでしょう」
最終的に社長のイスを譲らなくても、有能な幹部候補が効率的に集められれば、目的を達成できるというわけだ。その一方で、社内に対しては、社員のモラル低下を招くおそれがあると危惧する。
「対外的に『うちの会社にはマネジメントができる有能な社員がいないんですよ』と大声で言われているわけですからね。ある程度のポストの人たちは複雑な気持ちでしょう。『納得できない』『やってられない』と思う人もいるのではないでしょうか」
長男は「親父が気に入らず」退社
社外の人材が短期間でオーナー経営者から経営を引き継ぐのも、現実には相当難しそうだ。昨年、社長公募で話題となったユーシンは、外務省出身の40代男性に1年程度で社長を譲る予定だったが、先送りを決めたという。
ユニクロの柳井正社長も、後継候補を招きながら、最終的には社外に追い出す形で、いまも自分が経営権を握っている。
「一代で成長した企業のオーナーは、自分のやり方へのこだわりが非常に強い。他人のアラが気になって仕方がないし、仮にうまくやられても嫉妬で引きずり下ろしたくなる人もいる。社長との相性が最大のネックでしょうね」(新田氏)
岡村社長も『ダイヤモンド』の取材に対し、長男が一時リーブ21で働いていたものの、「親父のような仕事のやり方が気にいらなかった」と退社したことを明かしている。長男でも合わないのだから、他人ではどうなるのか。
「仕事を人生の真ん中に置くなんて書いたら、外人だって来ない」「社員の平均年齢が若すぎる。社長も使い捨てか」「実は事業の限界が見えちゃったんじゃないの?」などの意地悪な見方もある。2年後の結果はどうなるだろうか。