就職活動中の学生たちが、リクルートスーツで汗だくになっているという。産経新聞が2011年7月12日に掲載した「合同就職面接会」の写真を見ると、9割以上が黒っぽいスーツを着用している。
一般的に企業は「クールビズ」での参加を呼びかけているというが、学生からは「騙されないぞ」という苛立ちの声も聞かれる。実際、人事部の採用担当者によるブログを見ると、怪しげな書き方をしている会社もあるのだ。
「マナー」「相手の不快感」で惑わす
あるメーカーの人事ブログには、こんな書き込みがある。6月に入って、ノーネクタイで来社する人が増えだした。しかし、この担当者、クールビズは「基本、正しい考え方」であるとしつつも、
「本来ネクタイがあって、スーツ姿がさまになると感じる」「スーツ姿で、ただネクタイを外しただけというのは、どうしても違和感を感じてしまいます」
とホンネを明かしている。
一担当者の個人的意見であり、会社を代表する見解ではないのかもしれない。しかし、これを読んで訪問する学生は、案内文に何が書かれていようとも、担当者に「違和感」を抱かれないよう、スーツで決めてくるに違いない。
また、ある外食チェーンの人事担当者は、クールビズで面接に臨んで本当によいのかという問いに、「いいんです」と太鼓判を押す。ただし、文章をよく読むと、
「マナーを押さえれば何の問題もない」
という条件つきだ。そして、周囲との関係を構築する上で必要とされる「不文律」を守り、「相手を不快にさせない範囲でやれば問題なし」と続ける。
しかし、「マナー」「不文律」「相手の不快感」というあいまいな基準を突きつけられても、学生たちは戸惑うだけ。よけい疑心暗鬼になって、無難な黒スーツに身を固めるのも当然のことだ。
「ノージャケットでOK」と明記すべき
このほかにも、会社でクールビズを推進中としつつ、「社会人としてのTPOを踏まえてください」「軽装はご遠慮ください」と、脅しのように注記しているところも。遠慮すべき軽装とは、ポロシャツなどを意味しているのか、ノータイ・ノージャケットも含むのか。
買い手市場の力関係を背景に、「自分の頭で考えられないの?」「常識的に考えろ!」という会社の方が不遜というものだろう。「会社は学生を試そうとしている」と感じる学生がいても、おかしくない。
結局、「汗だくスーツで就活」という悪習は、学生たちの横並び意識よりも、会社側の不手際や、タテマエでホンネを隠すいやらしさに原因があると言えそうだ。最後に、せめてこの程度には書いてもらいたいという例を、社名入りで紹介しておこう。
「今年は、当社の会社説明会、面接もクールビズにて開催します。学生の皆さんも『ノーネクタイ、ノージャケット』で大丈夫です!!」(渡辺パイプの人事ブログ)