この夏、大手各社で「在宅勤務」が導入されている。オフィスの一部閉鎖などと組み合わせて、夏の使用電力を削減しようとする試みだ。
しかし、オフィスの使用電力は大幅に削減されるものの、自宅で仕事をすれば各戸で照明や空調を使うことになり、トータルで電力使用量は下がらないのではないか、という意地悪な見方もある。
自宅の電気を使いすぎると逆効果?
在宅勤務を推進する大手数社に聞いたところ、導入に当たっては「総務省の試算」を参考にしているという。この試算は2011年5月13日に公表されたもので、在宅勤務によって、
(1)オフィス勤務人員の減少やスペースの工夫により、オフィスの照明を半減
(2)勤務時間の短縮により、オフィスのパソコンや空調の稼動を13時間から8時間に短縮
(3)自宅での空調・照明を1日4時間稼動
が実現すると想定した場合、1日1人当たりの電力使用量は3.8kwhから3.27kwhに減るという。
この試算には、批判もある。「在宅勤務中の空調や照明の稼動は、1日4時間では足りない」「これだけ厳しい条件で14%しか減らないのでは、効率が悪すぎる」といった意見だ。
仮に自宅での空調・照明を1日8時間とした場合、1日1人当たりの電力使用量は3.97kwhとなり、在宅勤務導入前を上回り、節電に逆効果ということになりかねない。
この点について総務省の担当者は、「1日4時間」はあくまで試算上の想定であるとしつつ、こう説明する。
「高層ビルのオフィスでは窓は締め切られているが、普通の住宅であれば空調を止めて窓を開けて風を入れる時間もあるだろう。日中の明るい時間帯であれば、照明を使用しないときもあるのではないか」
節電以外の「副次的効果」も期待
在宅勤務を推進する企業は、節電効果について社内で試算しているものの、「実際の効果は今年やってみて確認・検証する予定」とするところが多い。
たとえばソフトバンクでは、在宅勤務および直行直帰の「テレワーク」を、外回りの営業社員を中心に推奨しているという。
外出時間が長いため、オフィススペースの削減による不都合が少なく、自宅の電気代負担もかからずに済むと考えられるからだ。出先のカフェなどで報告などを済ませれば、電力使用量はさらに削減できる。
在宅勤務によって、節電以外の「副次的効果」も期待していると明かす担当者もいた。炎天下を出勤しなくて済むことで、従業員の体力消耗を抑えられるし、間引き運転している公共交通機関の混雑も緩和されるというわけだ。
今年は、節電対策の初年度。試算だけでは不透明な点もあるが、この夏の実績を検証して、秋以降の「ワークスタイルの変更」につなげていく必要があるということだろう。