コストダウンにもつながるとして、多くのオフィスで「節電」の取組みが積極的に行われている。中でも天井の「蛍光管の間引き」は、よくみられる光景だ。
しかし、この節電策の効果に疑問を呈する声もある。2011年7月4日の「モーニングバード!」(テレビ朝日系)では、サマータイム、打ち水と並んで、「蛍光管の間引き」は節電策にならないと説明した。
研究所の実験「間引いた分は節電になる」
「サマータイム」の問題点は、午後2時前後に訪れる「ピーク時の電力使用量カット」につながりにくいこと。「打ち水」は、日が高いうちは湿度の上昇を招くため、朝夕の涼しい時間帯に行ったほうがよいということだ。
これらは理解できるとして、「蛍光管の間引き」が効果なしとは、どういうことか。番組によれば、蛍光管を部分的に抜いても器具への通電状況は続くので、消費電力はゼロとはならないということらしい。
これに対して司会者の羽鳥アナが「点けてるのと一緒ってことですか?」と聞くと、進行役のレポーターは「ある程度、そういうことになってくる」と答えている。また、蛍光管を間引くことで、照明器具の故障の原因にもなるということだ。
これには、ネット上で疑問の声があがっている。
「うちの会社やってますけど…前年比68%とか脅威的な節電を達成してます」
「いいかげんな番組だな。検証しなさいな」
オフィスの照明間引きによる節電効果については、エネルギーや環境に関わる研究開発を行う財団法人電力中央研究所がレポートを公開している。それによると、東京都内のオフィスフロアで実験を行ったところ、「消費電力は間引いた本数の割合と同じ約60%が削減された」という結果が出たという。
同研究所に確認したところ、「実験の結果はレポートの通りであり、照明間引きによる節電効果は間違いなくあります」と強調する。テレビで紹介されたからといって、取り組みをすぐにやめてしまおうと早まってはいけないようだ。
一番確実なのは「元のスイッチを切ること」
とはいえ、節電効果が上がりにくい照明間引きも確かにあるようだ。
電力中央研究所の研究員の話では、「2~3本の蛍光管がセットになっている器具で、1本でも外すと明かりが消えてしまうタイプ」では、消えたままの蛍光管を器具に差し込んでおくと、電力を浪費してしまうという。
環境省にも同じ質問をしたところ、蛍光管の間引きは「器具の年式やタイプによって、効果が異なることはある」という答えが返ってきた。
古いタイプの器具を使っている場合、節電効果がまったくないとは言えないが、蛍光灯の本数を半分にしたからといって、電力も半分にはならないケースもあるのだとか。
より確実な節電方法は、元のスイッチを消すこと。環境省のあるオフィスでは、昼間の明るい時間帯では、8列ある蛍光灯の7列を消して、約60名が仕事をしているという。
「LED蛍光灯も出ているのですが、大元の器具から工事が必要になるので、すぐに切り替えるのは難しい。いまは手元にLEDのデスクライトを置いて作業をしています」
また、照明器具にはインバーター(安定器)の有無などによっても、最適な節電方法が異なる場合があるという。電力中央研究所でも、大規模な照明間引きをする際にはメーカーへ確認することを推奨している。