「この人についていきたい」と部下に思わせる言葉

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   「とてもじゃないけど、あの人にはついていけないな」――。雑談の中で上司を批判する光景は、会社の中ではよく見られることです。でも、そう言っている人が、実は同じことを後輩から言われていないでしょうか。

   また、批判の的となった上司も、さらに上の上司に対して同じことを考えているものです。最近は政界トップでも同じようなことが起こっているので、日本全国で多数の「ついていけない」が連なっているのかもしれません。

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「私の責任」と盾になれるか

信頼関係は日々の積み重ねから
信頼関係は日々の積み重ねから

   この悪い連鎖をどうやって断ち切ればよいのか。どこかで誰かが、上層部や社外からの理不尽なプレッシャーに対峙する人がいなければなりません。もちろん、組織防衛が目的になってしまったら意味がありませんが、

「このミスは、指示をした私の責任です」
「それは違います。部下たちは一生懸命やっています」

と、リーダーが矢面に立つ覚悟を決めると、責任のなすり合いの連鎖が止まり、メンバーの士気は高まります。

   組織において、上から無理難題とも理不尽とも思える指示が下りてくるのはよくある話で、それを無下に断っていては「使えない部下」のレッテルが貼られてしまいます。

   だからといって安請け合いし、そのまま下に丸投げしていては誰もついてこなくなります。自分のために動いてくれる部下たちを「守る」ことを基本とし、困難な仕事であっても、

「心配しなくてもいい。責任は自分が取るから」

と盾になる覚悟を決め、

「君たちの頑張りには、最大限報いるよう努力する」

と誠意を見せることで、部下は安心してついていこうと思うものです。

   もちろん、ときには無謀とも思える挑戦を「会社の方針だ。やってくれ」と指示しなければならない場面もあるでしょう。それでも、普段から筋の通った姿勢を示していれば、部下も「仕方がないな。ひとつやってみるか」と思えるのではないでしょうか。人は気持ちで動くことを忘れてはいけません。

「部下に仕事を頼むときの3要素」を押さえる

   生保業界で働くDさん(33歳)は、「うちの上司にはついていけない」と感じています。会議の前日遅くに「資料を至急作成してくれ」と急に指示してきて、遅くまでかかって作成したのに、会議の席で常務から資料に注文が入ると、

「あ、それはDが作成したものでして…」

と言い逃れをする始末。Dさんからすれば、常務の思いつきのトンチンカンな指摘以上に、「後でよく注意しておきますので」という上司に不信感が募ります。

   会議のあと、上司はあろうことかと部員の前で「君がしっかり資料を作らないからボクが怒られたじゃないか。しっかりしてくれよ」とグチを言ったのだとか。Dさんは帰りがけに、同僚と深夜までヤケ酒を飲んだそうです。

「自分で問題に気づいたのなら、資料を受け取ったときに指摘すればいいじゃないか。一度承認したことは自分の責任だと、なぜ言えないのかな」

   こんな上司にならないために、「部下に仕事を頼むときの3要素」を押さえておく必要があります。

   1つめは、「仕事の指示は明確にすること」。何のために、どんなアウトプットを出せば省力化できて、かつ効果的なものになるか。中間報告で上がってきたものに、何が足りないのか。的確に指摘することが大切です。

   2つめは、「部下に仕事をある程度任せること」。何でも自分で手を出し口を出さなければ気が済まない人の下では、部下は成長できません。適切な権限を与え、自分の頭で考えさせて、失敗を恐れず挑戦させる経験を通じて、初めて自信と勇気がつくものです。

   3つめは、「責任を引き受ける姿勢」です。何かあったら「それは部下のせい」と逃げる姿を見せられては、誰もついていきたいとは思いません。

高城幸司

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*2011年6月、『図解 チームをもつ前に読む!リーダーシップが驚くほど身につく本』が学習研究社より発行されました。

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
「高城幸司の社長ブログ」
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