スタジオ02の大関です。今回も「営業」のお仕事のポイントを、質問に答える形で解説します。
Q:売り子での実績を評価されて、新店舗の店長を任されることになりました。今まではお客さまに「お似合いですよ」と商品を案内していればよかったのですが、店長はお店全体の雰囲気作りや導線づくり、人の管理とか大変なことばかりです。
今、なにより頭を悩ませているのが、お客さまがお店の前を素通りしていくこと。前のお店と同じように「きれいなディスプレイ」を心がけているのですが、反応がまるで違います。どうやったら関心を引けるのでしょうか。(ブティックチェーン勤務・Mさん)
「ターゲット」と「営業テーマ」は明確になっているか
A:新しいお店の店長とは、難しい仕事を任されましたね。それだけ期待されているということでしょう。店長と一店員の役割の違いを意識しながら、まずは「自分が得意とすること」に引き寄せて考えてみてください。
Mさんが売り子として好成績をあげてこられたのは、来店されたお客さま一人ひとりに対し、その人に合った商品を上手に提案し、説明できたからではないでしょうか。
来店したお客さまの属性や好み、来店の目的やニーズを聞き出し、提案する「営業テーマ」を見定めてから、
「夏のBBQにはヴィヴィッドな色使いで、涼しくて日焼けしにくいこんな組み合わせがイイですよ!」
と「ストーリー性のある営業トーク」ができていたはずです。
Mさんの相談に答えるためには、ブティックのみならず、あらゆる営業に共通する「ターゲティング」と「営業テーマの絞り込み」「ストーリー性のある営業トーク」の3要素を押さえる必要があります。
まずは道行く人を観察し、地域の客層の年齢、性別、職業、収入の多さなどを想像して「ターゲット層」を設定します。
次に、ターゲットに対して何をどのように組み合わせて魅力的に見せるかを検討します。売り込む「テーマ」決めです。大人の富裕層が多い地域なら、バカンス用のお出かけ着は必須アイテムです。
このような整理をせずにモノを考えても、ターゲットに刺さる店づくりはできません。特に「きれいなディスプレイ」は、よほど非日常なレベルで突出していない限り周囲に埋没し、商売には意味をなしません。これは営業カタログやECサイトにおいても同じことがいえます。
ポイントは「お客が引き込まれるストーリー性」
ここまでくれば、「ストーリー性」を持たせて魅力的に提案することはMさんの得意分野でしょう。たとえば「避暑地で夏のバカンスを過ごす夫婦」を想像し、彼らに合ったシチュエーションを考えるわけです。
「軽井沢の万平ホテルに泊まって、旧軽銀座のカフェテラスで遅い朝食のオーダーをして待っている――」
そんなシーンでは、どんな服装や小物の組み合わせがふさわしいかを考えながらディスプレイを設計しましょう。これを「テーマ・ディスプレイ」といいます。
テレビショッピングで爆発的にモノを売るプレゼンターも、買い手の生活場面に強く訴えかけるテーマ・ディスプレイの手法を使っていました。
たとえば、夜更かしをする若い女性をターゲットにした「簡単ネイルアート」。彼女たちは、夜遅くまで遊んできたり、水商売で働いたりしていますから、普通のOLさんのようなささやかな自己満足だけでなく、男性ウケをはっきり考える人が多い傾向にあります。
そこでプレゼンターは、「毎回のデートごとに指先まで着替えをしていたら、彼は手をつなぐたびにあなたのオシャレに気づくことでしょう」というストーリー展開を語るわけです。基本に戻って考えてみると、いろんなところにヒントがあることに気づくものです。
※営業を中心としたお仕事の悩みについて、筆者がお答えします。記事のコメント欄にどしどしお寄せ下さい。
大関 暁夫