高齢・障害者雇用支援機構は2011年6月10日、70歳以上の従業員がいきいき働いている企業の事例集「70歳いきいき企業100選」を発表した。
紹介されている事例には、若者が敬遠しがちな職場において高齢者が活躍しているケースがいくつも見られる。
最高年齢77歳「定年なし」「残業ゼロ」
井村造船(徳島・小松崎市)は、従業員数92人の造船業。平均年齢は53歳で、45歳以上の従業員が7割を占める。最高年齢者は77歳。
定年を設けず、本人が健康面で勤務できなくなったり、家庭の事情などで辞めざるを得なくなったときが「退職」となる。
船舶の建造および修理という「3K産業」では、若手の採用や定着が思うように進まず、高齢者をいかに有効に活用するかが課題だった。
そこで、仕事に対する意欲が高く、技能もある高齢者の活用を強化することに。ただし体力が落ちる高齢者は、労働時間が長くなればなるほど労災を起こしやすい傾向が特に強く、「残業ゼロ」の時間管理を打ち出すことにした。
定年制を廃止したことで、定年前に見られたモチベーションやモラルの低下が減少。若い従業員の模範的存在となり、技能指導を通じて高齢者自身の意欲向上にもつながっているという。
大阪・大東市のコック食品は545人の従業員を擁し、弁当の製造や企業の食堂運営、学校給食の提供などを行っている。平均年齢51歳で定年はなく、最高年齢者は76歳だ。
高齢化で「高齢者のノウハウ不可欠」
コック食品では仕事柄、早朝から夕方までのローテーション勤務を365日確保する必要があるが、前日遅くからの仕込みや早朝勤務もあり、若者から敬遠されがちだった。そこで勤務態度もよく、遅刻・欠勤も少ない高齢者の雇用を進めているという。
岐阜県で食品スーパーを展開するファミリースーパーマルキは、定年を99歳に設定。高齢化が進む中で、取り扱う商品選びに高齢社員の知識やノウハウが不可欠となっている。
「正直者が馬鹿と見ない会社づくり」を経営理念に掲げ、14年までに「育児休業中の情報提供で円滑な職場復帰を支援するしくみづくり」「育児や出産で退職した従業員の再雇用制度」などを導入する計画を立てている。
現在、23%を占めるわが国の65歳以上人口は、2013年には25%、2025年には30%にまで高まると予想されている。就職氷河期で働き口がないと嘆く若者は多いが、一方で健康で意欲の高い高齢者が働く場の確保も重要な課題となるだろう。