後輩から「安売りSさん」と陰口言われ、悔しい…

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   スタジオ02の大関です。今回もネット上にあまり書かれていない「営業」という仕事のポイントを、質問に答える形で解説します。

Q:工作機械販売の会社で、既存取引法人の営業担当を5年ほどやっています。悩みは、自分の押しの弱さ。扱っている商品は間違いのないもので、先方の担当者とも打ち解けてもいます。でも毎度最後に値引きを頼まれます。「いくらまで下げられる?」「○○まで下げてくれたらおタクに決めるよ」と言われ、足しげく通っている以上実績なしでは終われないので、値引きを応諾して仕事をとるというスタイルになってしまうのです。
上司からは「値引きしなきゃ取れないのか」といつも叱られますし、後輩からは陰で「安売りSさん」とか言われる始末。値引きしないと買ってもらえない、値引きすれば怒られる、どうしたらこの「値引き地獄」から抜けられるのでしょうか。

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価格だけなら「ネット」に勝てない

人が営業をする意味はどこにあるのか
人が営業をする意味はどこにあるのか

A:最初にSさん、あなたが必ず値引きをさせられる理由は、あなたの「押しの弱さ」ではありません。その理由はズバリ、あなたの営業活動が「商品」あるいは「有料のサービス」しか売っていないからではないでしょうか。営業マンがお客さまと相対で売るモノには商品のほかに、「付加価値」というものがあるのです。

   インターネットでモノを売る時には、基本的に商品しか売れません。したがって購入者は当然いろいろなサイトを比較して、同じ商品(あるいは同じ目的を達成できる類似商品)でなるべく安価なモノを求めることになります。

   一方、営業マンがお客さまを訪問して相対で取引をする場合、お客さまが購入の可否を決定する要因には、「商品」の価格以外に必ず「付加価値」が存在します。もっと言うなら、「付加価値」がないなら営業活動は無意味であり、価格ばかりが判断材料になって安価なネット販売には永久に勝てないのです。

   では、この「付加価値」の正体とは一体何なのでしょう。一般的には「安心感」とか「信頼感」とか言われるものがそれにあたります。少し噛み砕くと、「商品」価格以外のプラス対価を払わずにお客様が得られる、目に見えない“おまけ感”とでも言えるものでしょう。

   この「付加価値=おまけ感」は、通常「商品」に自動的に付いているものではなく、Sさんが独自に作り上げてお客様に提供しないといけないものなのです。

銀座のヴィトンで値引きする客はいない

   一般的な例をあげて説明しましょう。例えばルイ・ヴィトンの商品。東京の銀座にあるような正規のヴィトン・ショップ以外に、ネットでも並行輸入商品が売られています。これらの店での価格は正価より2割から5割くらい安いので、銀座のヴィトン・ショップで買う人はいなくなる――かと言うと、そんなことはありませんよね。

   なぜなら、ネットショップ等での販売は、正規の直営店とは違いますから、「もしや偽物?」とか「訳アリ新古品?」とか「実は少々難アリ?」とか、いろいろな不安がつきまといます。銀座のショップで買えば、当然そんな心配はゼロ。これこそ正規店が持っている信頼感や安心感という「付加価値」なのです。

   ブランドショップの正規店で「値引きしてください」というお客さんは、まずいませんし、正規店では普通値引きはしません。なぜなら彼らは正規店としての信頼感をバックボーンにして営業しているからです。値引きをしなくてはならない理由がありませんし、安易に値引きをすることは、むしろ正規店の信頼感を損ねることにもなります。

   一方、ネットショップでヴィトンを買う人は、逆に正価なら買わないですよね。正規店のような安心感という付加価値は存在しない訳ですから。「商品」そのものに値引きがないなら、仮にネットで買う「利便性」はあっても、それは正規店の「安心感」に勝るものではないので、相対で「付加価値」は存在しません。

   このように、商品を売る際の付加価値の有無こそが、商品を購入する側に「定価」の妥当性を納得させる重要なカギを握っているのです。

仲良くなることと信頼を得ることは異なる

   さてSさん。なぜあなたはいつも値引きを要求されるのでしょうか。日々の営業において、お客様への安心感とか信頼感という「付加価値」提供が十分ではないのではないかと思いますが、いかがでしょう。

   担当先に定期的に訪問をするのなら、事あるごとに自社の特徴や技術力やアフターサービスの充実などをしっかりと相手に伝え、あなたの会社の商品に「信頼感」という付加価値をつけないといけません。

   もし、会社として信頼感をアピールする材料が足りないなら、自分のフットワークのよさやレスポンスの確実さ、情報力の豊かさを印象付けることでも、他社に打ち勝つ付加価値は十分付加できるのです。

   相手にあなたから買う事のメリットを感じさせる「付加価値」があれば、仮に値引きを断ったとしても、必ずあなたの商品を選んでくれることでしょう。

   間違えてはいけないのは、担当者と仲良くなることと、信頼感を得ることは似て非なるモノであるということ。担当者相手に「油を売る」のはかえって信頼を損なう事になること。この点は十分に肝に銘じて、付加価値営業で「値引き」をはねのけてください。

※営業を中心としたお仕事の悩みについて、筆者がお答えします。記事のコメント欄にどしどしお寄せ下さい。

大関 暁夫

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大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。執筆にあたり若手ビジネスマンを中心に仕事中の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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