「平均年収」に騙されて会社を選んではいけない

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   日本では毎年、週刊誌や人材紹介系の会社が、企業・業界ごとの「平均年収ランキング」を作って公開している。そういうのを見て「おススメの会社はどこですか?」とか、「城さんは○○をバカにしてますけど、平均年収は千数百万ありますよね」とか、いろいろベタなことを聞いてくる人が実に多い。

   というわけで、基本的なことだがとても重要なことなので、年収ランキングと企業の選び方についてまとめておきたい。

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高給取りの中高年が引き上げているのかも

   日本企業の99%は、勤続年数に応じて上がっていく職能給というシステムを採用している。つまり、右肩上がりの賃金カーブにそって年々昇給していくわけで、いまから入ったとしても、必ずしもそれだけの平均賃金を貰えるわけではない。

   ここが最も重要な点で、たとえば平均年齢45歳で平均年収1000万円の会社より、平均年齢30歳で平均年収500万円の会社に入社した方が、生涯賃金が高い可能性だってありえる(個人的には平均年齢が40代という時点で将来性はないと思うが)。

   特に、いま重視すべきなのは、古い産業全体の地盤沈下傾向だ。たとえば「プレジデント」の調査によると、2007年当時に平均年収1000万円以上の上位企業は70社あったものの、09年では47社にまで減少し、しかもそのうちの31社は年収も下がっている。

   僕の個人的な感覚では、これがこの先増加に転じる可能性は限りなく低い。というのも、この手の大企業というのはたいてい労組が強く、「中高年の賃下げはイヤだ」→「新卒採用抑制&昇給抑制」→「平均賃金は維持しつつも平均年齢上昇」という負のサイクルが発生しているケースが多いからだ。

   つまり、目先の金に固執するあまり、技術継承や人材育成を二の次にしていることになる。にもかかわらず現時点でこれだけ下がっているということは、高給取りの中高年社員が定年退職すると、10年後あたりにドカンと平均年収が下がる可能性がきわめて高い。

   たとえば、08年度新人から給与水準を実質3割カットした日テレなどは、現45歳以上が退職したら、びっくりするくらい普通の会社になっているだろう。

「会社の格」から「仕事の内容」へ

   要するに、見掛け上の平均賃金につられて、なまじ平均年齢の高い会社を目指すのは、2、30代にとってはハイリスク・ローリターンだということだ。

   では、どういった基準で会社を選ぶべきか。自分が身につけたいキャリアに沿った仕事ができる会社を選ぶといい。

   営業力を身につけたいなら、すぐれた営業マンを多く輩出している会社に、中国に関わりたいなら、社長が「これからは中国だ!」と社員の尻を蹴っ飛ばしているような会社に進んで、そこから次の一歩を探せばいい。

   そうやって実力で昇給を勝ち取っていくアプローチの方が、高給取りのおっちゃんがいっぱいいる会社に身を任せるよりは、よほど確実だろう。

   会社の格から仕事の内容へ。いま起きつつある変化を一言で言えば、そういうことになる。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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