通勤の暇つぶしに「怪しいiPhoneアプリ」ウォッチ

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

   2010年5月5日付け東京新聞朝刊に、都内の調査会社がまとめた通勤に関する調査結果が掲載されていました。それによると、都内に通勤する人の59%がケータイでゲームやメール、ネットをやって過ごしているそうです。

   とりわけ、20代、30代では、3人に2人がケータイを通勤時間中に利用していることになるとか(20代68%、30代64%)。都内から大手町へ通勤する30代の会社員Aさんも、そんな一人です。

>>ケータイとほほ観察記・記事一覧

評価の極端なものを検索してチェック

   Aさんはここ1年ほど、変なアプリを検索して通勤のうち電車に乗っている約45分間をツブしているといいます。

「ケータイというかiPhoneなんですけどね。最初は、評価の低いアプリを検索して評価などを見て、なんでこんな変なアプリを開発する気になったんだろう、なんで役に立ちそうもないアプリをアップルが承認したんだろうと、その理由をあれこれ想像して楽しんでいたんです。
評価のなかには、『これをジョークではなく、本気でリリースしようとした勇気には、心から敬意を払いたいww』など笑えるものもあって、アプリ作成者やアップル担当者の気持ちを想像というか妄想するのとあわせて、かなり楽しんで通勤時間をやり過ごすことができるんですよ(笑)」

   ニュースは起きてから部屋を出るまでのテレビでも見るし、もちろん通勤中にネットでも見るので、今さら新聞は不要。といって雑誌を読むのも疲れるし、というなかで編み出した、通勤時間を楽しむ独自の方法がこれ、と。

   そして最近では、評価の高いアプリのなかから変なものを探すことがマイブームなのだそうです。

「評価が高いのに変なものって、要はヤラセとか詐欺とかなんですよ。ある意味、ネット上のダメ人間ウォッチングと同じで、ウォッチャー心をかき立てられるんですね」

   そんなAさんが最近見つけたのが、ミルスペック(米軍規格仕様)の災害用と銘打ったズームレンズ(望遠鏡)のアプリ。App Storeでの評価は「4+」と高めで多言語にも対応しており、しかも期間限定で50%の割引がついています。

「なぜ審査に通っちゃったのか」と推理

   「もう、アイキャッチがてんこ盛り。ところが、説明詳細を読むと、明らかに日本語がおかしい」。Aさんに教えられて実際に見てみると…。

「高い精度と安定性が持っています」
「精確的な情報が外面に教えられます」
「救助隊員に速やか、順調に救助できられます」

   たしかに、怪しい日本語が全面に展開しています。

   どうやら、使ってみたらしいユーザーのコメントも2、3ありますが、「ジョークアプリとしては面白い…金払わないと使わせないというのなら即削除」「アップデートしたら落ちる。動かん。使えん!」と、一様に散々な書き様でした。

   しかも、説明の冒頭に、わざわざ東日本大震災への見舞い文が書いてるあたり、思惑とは逆に、かえって怪しさを強調しているようにも思えてきます。これを450円払って試してみるかどうか。

「こうなると、震災便乗の悪質商法にも思えてくるでしょう。もしそうだとしたら、こんな脇の甘いやり方じゃなくて、もっとちゃんとそれっぽくやれなかったのか。まして、そんなものを、どういう審査で承認したのか。
実は人間ではなく、プログラムが『災害用』などとあったら自動的に承認するような、そんな仕組みになってるんじゃないか…。まあ、そんな感じで妄想しているうちに、あっという間に会社の最寄り駅に着く、というわけです(笑)」

   妄想っちゃ妄想なんですが、ちょっとした頭の体操にもなっていそうで、始業前のウォーミングアップに意外と良いのかもしれませんね。

井上トシユキ


>>ケータイとほほ観察記・記事一覧

井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
姉妹サイト