世の中には「良いコネ入社」と「悪いコネ入社」がある

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   先日、ツイッターで「コネ入社なんて普通だよ、やってない会社なんて存在しない」とつぶやいたら、意外に反響が多くて驚いた。コネを使うのは悪いことだとか恥ずかしいことだと思っている人は意外に少なくないようだ。

   結論から言うと、コネ入社がまったくないと言い切れる会社なんて、この世に存在しないと思われる。それくらい、ごく普通にある話だ。

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民間企業がコネを使うのは自由だ

   よくある疑問のひとつめは、

「企業はエントリー者の中から、公平に選ぶべきではないですか?」

というものだ。しかし、そもそも民間企業には、公平に選ぶ義務なんてない。政治信条や性、年齢を理由とした差別は禁じられているものの、それ以外では欲しい人材を自由に選ぶことができる。

   疑問のふたつめは、

「でも好き勝手に選べば、株主が怒るでしょ?」

というものだが、とんでもない。株主にとっても喜ばしい話だ。民間企業のコネ入社の多くは、取引先関係の縁故である。つまり、その人を採用することで、確実に会社の売り上げが確保できるわけだ。

   極端な話をすれば、年商10億円くらいの小売店の子どもを入社させれば、何も仕事してもらわなくても全然問題ない。下手をすると、1年で生涯賃金分くらいペイしてしまうことになる。

   しかも、その子を囲っているうちは関係も疎かにならないという「人質効果」も見込めるわけだから、これは費用対効果の良い投資みたいなものである。

   要するに、人脈の豊富な営業のスペシャリストをヘッドハンティングするのも、実家がお金持ちなお嬢様を総務部にお迎えするのも、本質的には何も変わらないということだ。

規制産業が政治家の子を受け入れるのはおかしい

   一方で、世の中には悪いコネ入社もある。その業界への許認可権を握っている政府の中の人や、税金をどう配分するかに影響力を発揮できる政治家が、自らの権力を使って身内を企業に押し付けるコネ入社がそうだ。

   この場合、確かに受け入れる企業の側にはメリットはある(あるいは、受け入れないとデメリットがある)。でも、それによって得られる利益は広く国民全員で負担することになるわけで、あってはならない悪いコネ入社だ。

   ちなみに、こういった悪いコネ入社が多いのは、マスコミやインフラ系といった規制産業で、電機や自動車といったメーカーにはほとんど来ない。

   日本は、グローバル企業よりもマスコミやインフラといったドメスティックな会社の方が処遇が高いというおかしな国であるが、後者が様々な規制で保護されているというのがその理由である。

   これからの日本では、あらゆる面で規制緩和が重要なテーマになるだろうが、その際、規制を作る側の子弟が、規制の囲いの中に多く送られているという事実を、多くの国民が知っておいて損はないだろう。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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