「苦しまない生き方」をするためには、欲を捨てればいい。しかし企業は欲を追求するシステムだから、苦しくなることがある。では、企業組織に属して利益を追求しながら、苦しまずに生きていくことはできないのか。
経営コンサルタントで企業経営者の小倉広氏は、過去と相手は変えられないことを踏まえて、「望めども欲せず、こだわらず」という考え方に沿えば、苦しまない働き方に近づけると提唱している。
「結果」ではなく「プロセス」に集中する
――失敗しても、こだわらずにやり通すことができれば、比べることで成り立つ企業社会でも、自分のペースで生きていくことができるようになります。
たとえば、「営業は結果がすべてだ」と上司に言われても、「結果」にこだわるのではなく、「結果につながるプロセス」に集中するのです。そして、結果を「欲せず」「こだわらず」、未達成であったなら、すぐに再び「望め」ばいい。それこそが、上司が言うところの「結果にこだわる」につながるのです。
こだわって努力しても、こだわらずに努力しても、一見同じように見えますが、こだわらない方が確実に心はラクです。だから、焦らず地道にできる。結局は、いい結果を残せる可能性が高くなるに違いありません。
とはいっても、現実にはなかなか結果にこだわらないことはできません。また、結果にこだわらないで努力を継続することも、なかなかできないのが人間です。
では、そうすれば「望めども欲せず、こだわらず」ができるようになるのでしょうか。
その方法は、次の3つを実行していくことがポイントです。
(1) ダメな自分を好きになる、(2) 相手を変えようとしない、(3) 何度でもやり直すこの3つの要素は、実はすべてつながっており、因果関係となっています。つまり、望みを持って何度でもやり直すことができると、現状ではダメなままでも、やがてダメな自分を許せる、好きになってきます。「仕方がない」と言って諦め、やめてしまったら、望みに近づくことはなくなってしまいます。
望みは一過性の目標と違って、捨ててはいけないものです。100回、1000回、1万回でもやり直す。だから人は成長できるのです――
(小倉広著『比べない生き方』ベスト新書、106~107頁)
(会社ウォッチ編集部のひとこと)
自らの経験と、禅や論語、老荘思想などを組み合わせたユニークな仕事論。筆者によると、「望む」は100万歩先のゴールであり、こころざし。「欲する」とは手に入ったら嬉しく、手に入らなかったら苦しいものを指すという。上司から見れば、「部下に成長して一人前のプロフェッショナルになってもらいたい」が望みで、「自分の成功のために部下を思い通りに動かしたい」が欲。イチローも「自分が納得できるバッティング」というプロセスに焦点を当てているから、結果を出し続けられる。