「在宅勤務の自由」を認めると、日本型雇用の矛盾がバレる

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   東日本大震災の後、首都圏では、ターミナル駅を中心に入場制限が実施されるほどの混雑状況が出現した。電力不足にともなう電車の本数削減が理由である。

   一方で、勤務場所の制約自体は、ITやモバイルの普及により、以前とは比較にならないほど薄まっている。「何が何でもオフィスにいなければならない人」だけ出勤するようにすれば、あれほどの混雑は回避できたはずだ。いや、出勤するにしても、時間をずらしたり休日をシフト制にするだけでも、ずいぶんと効率的な働き方が可能となるはずだ。

   にもかかわらず、なぜ多くのサラリーマンが、同じタイミングで会社を目指さねばならないのか。

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あぶり出される「貢献の割に報われない人」

   仮に、ある会社が、これから社員に「在宅勤務の自由」を認めるとしよう。まず必要となるのは、「誰が何を担当するか」という業務の割り振りであるのは間違いない。

   というのも「オフィス以外での勤務を認める=成果で働きぶりを判断する」ということなので、成果となるターゲットを切り出して与えるプロセスが必須なわけだ。

   ここまでは、トップの強い意志と、それを形にできるしっかりした中間管理職がいれば、比較的スムーズに行えるはずだ。

   問題なのは、ここからだ。この切り分けをやると、普段もらっている月給と割り振られた業務が全然相関していないという事実に、多くの人が気付くだろう。業務の質量は上の上なのに、処遇は平均以下だという人は、どこの職場にもいるはずだ。

   「貢献している割に報われていない人」は、何が原因なのだろうか。それはきっと、その人が「若手」であるか、「女性」であるか、あるいは「非正規雇用労働者」だからだ。

   「一週間くらいなら問題ないよ」という人もいるとは思う。でも、それがずっと続くとすればどうか。ボーナスのたびに、担当業務の成果をきっちり評価されても、ベースとなる基本給の基準はてんでんばらばらという現実に耐えられるだろうか。

   恐らく、無理だろう。日本人はそれほどお人よしな民族ではない。

今なら見直せる「業務分担」と「処遇」

   これこそ、いつまでたっても日本のホワイトカラーが職場から解放されない理由である。解放してしまえば、日本型雇用の本質が身分制度であり、女性や若年層、非正規雇用からの搾取に基づいているという「不都合な事実」が明らかになってしまうということだ。

   とはいえ、さすがに今回は、大手企業にも自宅待機や在宅勤務を命じる企業が続出した。たとえば同じ自宅待機でも、保証される賃金はピンキリで、雇用形態によっては保証ゼロという人もいるだろう。通勤した人の中にも、自宅でそん色ない成果が挙げられるのにと感じた人は多いはず。

   一方、節電を要する状況は夏以降まで続く見込みで、職場からの解放は、これからの日本にとって、とても重要なテーマの一つとなるだろう。多くの人が日本型雇用の矛盾を肌で感じている今なら、業務分担と処遇のある程度の見直しはトップダウンで可能だと思われる。

   この状況は不幸なことではあるが、それをプラスに転じる好機となすことが、復興への最大の努力ではないだろうか。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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