アパレル企業のプレスの仕事をしている20代のA子さん。震災後も「経済活動」と称して、足しげく合コンに通っている。以前から約束していたこともあるが、ここで中止すれば「飲食店とか、いろんな人が困るのでは」という思いもある。
先日、大手企業の男性たちと合コンしたとき、いままで感じたことのなかった違和感を抱いたという。「地震が直接関係してる、というわけでもないと思うんですけど…」
大企業の正社員に「消費者の気持ち」分かるか
初対面の大手電機メーカー勤務の男性は、3人の30代。いずれもイケメンで上等なスーツを着こなし、趣味も話題も申し分ない。
ただ、仕事の話になると、なぜ自社の製品が売れないのか、まるで理解していないような気がしたとか。
「要するに、どうしようもなく『リア充』(現実の生活が充実している人たち)なんですよ。でも、生意気言わせてもらえれば、ああいう生活ができる人は、もう世の中に一握りしかいない」
そういう層に属する人たちに、日々の生活に苦しむ大多数の消費者の気持ちが分かるのか――。A子さんは、そう感じたという。
商品が売れないといっても、現実には「雇用の危機」にさらされるわけでもなく、安定した生活が保証されている。給料の額も平均よりずっと上だ。
一方、A子さんの仕事は華やかそうだが、中身はきつく、会社の先行きも厳しい。1年単位の契約社員で、今年いっぱいでクビを切られるかもしれない。
「自分が恵まれてないとは思わないけど、彼らには『いっぺん給料半分で半年くらい生活してみたら?契約社員やってみたら?』と言ってやりたいと思いました。そしたら、合コンで話してたような優雅な顧客層なんてありえない、って分かるから」
合コン相手としては最高だし、もし付き合うことができたら「完全な玉の輿」だったはず。でも今では、「世の中が見えていない人たちに、本当に『将来性』なんてあるわけ?」と不安を抱いてしまったという。
未来の日本がどうなるか、見通して生き抜いていけそうな男性を見つけることなど、そう簡単ではない。突然起こった震災の影響も長引きそうだ。「とりあえず、自力で生き延びる力をつける方が先ですかね」と、A子さんは苦笑いしている。