新年度は「転職ハイ」「異動ハイ」に気をつけよう

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   まもなく新年度が始まります。新卒入社以外にも、転職や異動で新たな役割や期待を担って職場を移る人もいることでしょう。そのとき、ぜひ避けたいのは「転職ハイ」や「異動ハイ」になって職場で浮いてしまうことです。

   特に転職組は要注意です。成長著しく新卒学生の人気が高く、定着率も悪くない。なのに、なぜか中途入社の離職率がとても高い――。そんな悩みを持つ会社も少なくないのです。

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中途入社の提案にプロパー組が反発

前向きの提案を批判と受け取られてしまった
前向きの提案を批判と受け取られてしまった

   私が話を聞いたNさんは、中途採用で入社した会社を半年で退職。その理由を訊ねたところ、「辞めるときは正直言って期待外れの会社だと思ったのですが、いま思えば、前の職場で学んだやり方にこだわり過ぎてしまったかもしれない」と反省しています。

   当初は新しい会社のやり方を1から学ぼうと新鮮な気持ちで臨み、周囲の話をよく聞いて意欲的に吸収していたようです。しかし、3か月目あたりで職場の雰囲気にもやや慣れてくると、職場の問題点が目につき始めました。

   そこで、多少はぶっちゃけ話ができるようになった同僚に、「この会社は、決められたことをやらない人が多いよね」「管理職たちに対して、心を開いた意見が言いにくいよ」と何気なく不満を漏らしました。

   すると、それが生え抜きのプロパー組の耳に入り、「あの中途入社は、もう会社批判を始めた」「俺たちがここまで築き上げてきた苦労を、何も知らないくせに」などと陰口を言うようになったそうです。

   そんなある日、職場の会議でNさんが「前の会社でこういうことを実践していたのですが、ここでも効果が上がるのでは」と発言したところ、プロパー組から

「そんなに前の会社がいいなら、戻ったらいいじゃないか」

と言われ、すっかり溝が深まってしまいました。

   Nさんは、批判ではなく改善の提案をしたつもりだったので、ショックを受け、それをたしなめない上司にもすっかり幻滅。再び転職活動を始め、半年で会社を移ってしまったというわけです。

仕事の成果だけでなく、職場になじむことも大事

   もちろん、受け入れる会社側にも問題はあります。狭い世界しか見てこなかった人たちが外の空気を吸ってきた人の意見に拒否反応を示すことは、会社が成長していくためには得策でない場合もあります。

   「会社の常識は、社会の非常識」という言葉もよく聞かれます。耳が痛い指摘や忠告に耳を貸せない組織は腐敗していくでしょう。

   一方で、転職や異動をしてきた人が、新しい職場に慣れたい、早く戦力になりたいと焦るあまり、張り切りすぎて「転職ハイ」「異動ハイ」になってもいけません。

   また、現実が見えてきたときに、反動で極度に幻滅するのもよくありません。

   まずは転職や異動に際して、「自分は何を求められているのか」上司に聞き取りを行うことは欠かせません。自分は新しいことをするつもりだったのに、「既存客からの売り上げを確実に上げてもらいたい」と期待されているかもしれません。

   あまりに過大な期待を寄せられているときには、張り切るだけでなく、トラブル回避のために、無理なものは無理とか、どのような支援が必要なのか冷静に伝えることも必要でしょう。

   仕事の成果だけでなく、同僚たちとの人間関係を良好に保ち、職場になじむことも忘れずに心がけたいものです。前の会社への愛着を披露するのはご法度。新しい職場の問題点や解決策のアイデアは、気づいたらメモをしておき、タイミングを見計らって指摘するようにしましょう。

高城幸司

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高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
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