東日本大震災での安否確認や情報収集に使われたケータイ。少々、興奮気味に語るのは、東京在住の男性会社員Aさん。
「スマホを使い、無線LAN経由でスカイプに接続することで、いつでも通信ができました。もしやと思っていた青森県の友人と連絡が取れたときには、感動で涙が出てしまった。その後も、その友人から東北の現地情報をやり取りし、必要だと思われる情報はツイッターで流してました」
「メディア」としての機能を発揮
スカイプは、3月14日から利用料を無料にしたことで、多くのスマホユーザーが利用していました。そのほかにも、取材で聞いたなかには「PHSがつながる」という情報が流れ、事業者のもとへ借りに行った人もいたそうです。
今回、ツイッターで情報が多く流れ、情報発信ツールとして、いまさらながらにネットの評価が高まっています。
ただ、ネットが情報の発信や集約に一定の威力を発揮する様は、1999年9月30日に起きた「東海村臨界事故」の時にも見られたことです。
当時はダイヤルアップ接続であり、情報の集まる場所も掲示板サイトの「2ちゃんねる」でした。報道される内容からうかがい知れる事故の状態に対する考察や解説、地元の混乱の様子や安否情報などがやり取りされ、まとめサイトも登場しました。
異なるのは、ケータイやスマホ、ブロードバンド回線や無線LANの利用といったツール、インフラの変化に加え、当時から圧倒的に増えたそれぞれの利用者数。
テクノロジーが飛躍的に進化し、多くの人が使い、当たり前のツール、インフラとなったことで、ネットが回覧板的な「連絡網」にとどまらず、情報を集めて流す「メディア」といえる機能を発揮したことが評価されているのでしょう。
はしゃぐ姿を被災者はどう思うか
一方で、特にツイッターで顕著だったことが2つありました。ひとつは、有名人を情報集約のハブ(情報集約のセンター、中継場所)として利用する情報の流し方。
正直、これには、有名人も一般ユーザーもはしゃぎ過ぎだろう、と思いました。自分の専門でもないことを、きちんとした検証もなく中継していた有名人が多々見られ、結果的にデマの流布に積極的に加担したり、正しいかどうかわからない情報を煽る役割をしていた例も目に付きました。
もうひとつは、専門家と知るや、まるでQ&Aサイトへ投稿するがごとく、脊髄反射的になんでもかんでも質問を投げかけていたことです。
専門家であるがゆえに、本来は正確なデータや情報がなくては答えられないことも多くあるのはずなのですが、そんなことはおかまいなし。
現実のメディアの報じ方と異なっていたり、報じられていないことについては、曲解や深読みも横行し、デマや陰謀論へと発展していったケースすらあったと取材で聞いています。
被災して困っているならともかく、安全無事な状態で興奮してはしゃいでいる姿を第三者的に引いた視点で見たとしたら、あなたはどう思うでしょう。
3月13日にラジオの取材を受けて以降、各所でお話ししていることですが、重要な情報が埋もれてしまう、間違った情報が広まってしまう、義援金詐欺など悪意の付け入る隙を生んでしまうので、はしゃがず、不要不急なネット利用は控えるようお願いします。
井上トシユキ