ライフラインは「ケータイメール」 でもどこに送れば…

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   ニュージーランド南島で起きた地震では、外部との連絡にケータイのメールが多く使われました。

   無事を知らせたり、状況を知らせたりする際、回線をいちいち独占してしまう通話より、データを細切れにして送信するメールのほうが混雑しにくく、規制もかかりにくい。メールが多く使われた背景には、こういった事情もあったということです。

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大地震ではPCが使えなくなるおそれも

   幸いにも被害に巻き込まれなかった現地の日本人とは、ツイッターを介して詳しい天候や必要な物品についての情報がやり取りされていました。

   「でもさ」とつぶやいたのは、都内でメディア関係の会社を経営する50代の男性Aさん。

「日本でも、いつ、どこで、大きな地震が起きるかわからないわけでしょ。テレビの映像でも視たけど、激しい揺れとなると、デスクトップのPCが壊れて使い物にならないとか、ルーターが壊れちゃってPCでは通信ができないという状況もあり得るよね。
そうなると外部との連絡手段は、やっぱりケータイとかスマホってことになると思うんだ。ってことは、たとえ瓦礫のなかに取り残されてもすぐに取り出せるよう、ポケットなんかに入れておくほうがいいってことになるよねぇ」

   電池の保ちも考えると、簡易充電器や予備のバッテリーも常時携行するのが理想、ということになります。

   しかし、大地震に遭遇してしまったとして、その後で自分がケータイを冷静に使える状態にいるとも限りません。

   たまたまケータイを持たずにちょっと外出していた、カバンに入れっぱなしにしていて席を外していた、なんて場合もあります。

「そりゃあそうだけど、だから、普段の心構えってことでさ。外部と連絡がついたことで救助が早まった、ってこともあり得るでしょ?」

   ケータイやスマホもこうなると、もはやライフラインの一部とも言えます。

「無縁社会」な自分に気づいて戦慄

   筆者は省エネのためにGPSは切っていますが、実は入れておいたほうが発見されやすくなるのか、実家や緊急連絡先を短縮ダイヤルにしておいたほうがいいのか…。

   Aさんと話していて、自分のケータイの設定について、少し考えをめぐらせました。

   そこで、ハッと気づいた事実。

   特に実家と連絡することもなく、決まった交際相手がいるわけでもなく、独立して家庭を持っているわけでもなく、またどこかの組織に属しているわけでもないので、日常で必ず連絡する先というものがないのです。

   いざという時でも、ケータイがあればなんとかなる可能性が高くなってくるということよりも、大都会のなかでいざという時こそ孤立してしまうだろう自分の状況のほうに、かなりゾッとしてしまいました。

井上トシユキ


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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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