日本人が苦手な英語で交渉するときの「4つのポイント」

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   このところ企業が、TOEICのスコアを採用や昇進の条件にしてきているようだ。英語の重要性の認識が高まってきたのは、とてもよいことだと思う。

   しかし、TOEICはあくまでリーディング、リスニング、文法などの基礎力をみるテストである。いわばスポーツ選手にとっての基礎体力チェックみたいなものであり、これだけで実戦が戦えるほど世の中甘くはない。

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理解8割ならその場で「イエス」は危険

   外資系金融機関でずっと仕事をしてきた私は、英語でいろんな苦労を重ねてきた。

   私は帰国子女でも留学経験者でもない。しかし長年の苦労のおかげで、英文をななめ読みしたり、CNBCやブルームバーグ(米国の衛星テレビ局)などにコメンテーターとして数多く出演したりする程度の英語力がついた。もちろん、まだまだ力不足だと感じてはいるが。

   そこで今回は、英語が苦手な人が英語での交渉に臨むに当たり、何が重要なのか、私の経験を踏まえて書いてみたい。あなたがアメリカの地方都市の企業との交渉のために、会社から現地に行かされたとしよう。そんな時、次の4つを念頭に置いて交渉に臨むべきである。

   1つめは「はっきりしゃべること」。

   一般的に日本語は、口先でしゃべる言語である。ただでさえ下手な発音なのに、口先で英語を話したら、わかりにくくてしょうがない。いくら内容が良くても、相手に伝わらなければ零点だ。

   特にアメリカ人は腹式呼吸でよく響く声で話すので、ぼそぼそしゃべるようでは気合いからして既に負けている。日本的発音だろうと何だろうと、自信をもって力強くしゃべれば相手に通じるものだ。

   2つめは「イエス・ノーを軽々しく言わないこと」。

   イエス・ノーを言うということは、最終的判断を下したということだ。だから大事な問題に、おいそれとイエス・ノーを言ってはいけない。相手の話を8割理解したとしても、残りの2割に決定的に重要な問題点が隠されているかもしれないのだ。

   とはいえ、照れ隠しでニヤニヤしたり、意味なくガハハなどと笑ってごまかしたりするのは論外。「これは重要な問題なので、さらにメールなどで詰めてから最終的結論を出したい」といった逃げ道を作ることを考えるべき。

語学力以外で失敗しないように

   3つめは「わからないことは聞き返すこと」。相手が言っていることがわからないのを、恥ずかしがる必要はない。

「こっちは外国語をしゃべっているのだから、こっちのことを考えてゆっくり話してくれ」

みたいなことを言える程度の精神的余裕を持ちたい。

   4つめは「説明は“パワーポイント方式”で行なうこと」だ。下手な英語で話すのだから、とにかくわかりやすく筋道だった解説をするのが第一。パワーポイントでのプレゼンテーションのように、まず結論を示し、そのあとにブレット・ポイント(箇条書き)でいくつか論拠を示す、というのがお薦めだ。

「我々はA案を提案します。その理由は3つあります。第1は・・・」

とやるわけだ。

   この手法は、普通の会話の場でも有効である。意見を言うときには「私はこう思います。なぜなら(because)・・・なので」と「ビコーズ」を使うとよい。

   ビコーズという言葉を使うようにすると、思考も論理的になってくる。また、「ポイントは3つあります」(There are three points to consider.)とまず言ってしまう、というのを習慣づけるのも有益だろう。実際には2つしかポイントを思い浮かばなくても問題はない。

   以上である。いかがだろうか? 当り前のことではないか、と思う向きもあろう。しかし私が見たところ、日本人ビジネスマンは9割方これらの基本ができていない。

   語学の実力は一朝一夕には身につかないが、せめてそれ以外のところでは失敗のないようにしておきたいものだ。

小田切 尚登

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小田切尚登
経済アナリスト。明治大学グローバル研究大学院兼任講師。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバ等の外資系金融機関で株式アナリスト、投資銀行部門などを歴任した。近著に『欧米沈没』(マイナビ新書)
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