米アルステクニカが2011年2月6日に報じたところによると、フェイスブック内で職場の上司をけなして解雇された女性が、会社に処分を撤回させることに成功したそうだ。
これまでブログの書き込みなどを理由に解雇された人は存在したが、これからの会社や上司は、従業員から言われっ放しになるのだろうか。
「友達」に煽られ「マヌケ」「クソ」を連発
この訴訟については、在米ジャーナリスト・瀧口範子氏の「シリコンバレー通信」でも取り上げられていた(ただし和解前の10年11月11日付)。
それによると、問題の女性従業員は、仕事ぶりについて顧客からクレームをつけられ、上司から「報告書」を提出するよう指示された。そこで彼女は労働組合に代理を依頼しようとしたが、上司に止められたため、家に帰ってフェイスブックに不満をぶちまけたらしい。
「精神病患者を監督役にするなんて、この会社も笑っちゃうわ」
フェイスブック上の彼女の「友達」の賛同もあり、彼女は「マヌケ(dick)」「クソ野郎(scumbag)」といった罵詈雑言を連発。それを知った会社は彼女を懲戒処分とし、停職の後に解雇した。
さすがに「クソ野郎」は社会人としてどうかと思うが、彼女が駆け込んだ全米労働関係委員会の調停により、このほど彼女に有利な和解が成立したという。
その内容は「雇用主は組合員であるこの女性を懲戒処分としないこと」、つまり解雇は取り消すこと。また、「雇用主は従業員同士で職場の労働状況について話すことを禁止しないこと」というものだ。
この会社のインターネットポリシーには、ネット上に会社や上司への批判を書いたり、許可を得ず会社について書いたりすることを禁止しており、懲戒処分はこれを根拠としていた。しかし和解によって、このポリシーの定め自体が無効とされたことになる。
「給湯室でのグチと同じ」ってホント?
瀧口氏の記事によれば、ソーシャルネットワークでのおしゃべりは「給湯室でのヒソヒソ話と同じ」と主張するアメリカの法律専門家もいるという。従業員には給湯室での雑談と同様、フェイスブックで、
「うちの部長、とんでもないクソでさあ」
などとグチを語り合う権利があるというわけだ。
確かに過去の懲戒解雇のケースを振り返ると、「公開されていて誰もが読めるブログやツイッターに職場や顧客の悪口を書いた」「参加者に顧客が含まれる可能性があるコミュニティである顧客の悪口を書いた」といったケースが思い出される。
したがって、フェイスブックのようにアクセスを「友達」に制限したSNSならば、不特定多数が閲覧可能な書き込みではないという見方できる。また、「友達」に自社の顧客などが含まれない限り、上司の悪口によって会社はなんら損害を受けないとする主張もありうる。
とはいえ、閉じた環境での書き込みがいちど外に漏れれば、他人の名誉を傷つけたり、会社に損害を与えたりするおそれも生じる。根拠のないウソや中傷であれば、なおさら。書き込みは慎重にすべきなのは当然だ。