毎朝、朝礼で「スピーチ」をする職場があるようだ。効果の有無は職場で決めることなので、とやかく言う必要はないが、スピーチ当番になった人から「もう話のネタがない」と嘆く声を聞くことはある。
そんな人には、NAVERまとめの「偉人の名言から学ぶ朝礼ネタ」というリンク集が参考になるのではないか。ただ、ネタの選定には細心の注意が必要だ。
聞き手の立場確認しても、限界ある?
例えば、エジソンの「世の中が必要としているものをつねに探せ」というお言葉。発明王にかこつけて、お客さま志向の重要性について語り、「自分もアンテナを高くしていきたい」と付け加えてみるのはどうだろう。
ニュートンの「今日なし得るだけのことに全力を尽くせ。そうすれば明日は一段の進歩があろう」という言葉を引用し、自分も目の前の仕事をコツコツ頑張って成長したいと決意をあらわすのもいいかもしれない。
特に若手は、自分の経験や感想だけを話しても、興味をもたれない。そこで歴史上の人物や大手企業の経営者の言葉を引くことで、聞く値のある話と思ってもらえるうえに、「あいつ、よく勉強しているな」という印象を持たせることもできる。
しかし、引用次第では逆効果になることも。例えば、まとめにもあるエマーソンの「どんな芸術家でも最初は素人だった」という言葉を不用意に引けば、「そんなことも分からんのか」が口癖の上司を非難していると邪推されるかもしれない。
フォードの「学ぶことをやめた人は誰でも老いている」という言葉は、自分の技能に自信を持ったベテラン社員たちを揶揄していると勘違いされるおそれもある。その日の聞き手を確認し、彼らの立場を想像して「地雷」を踏まないことが大切だ。
ただ、そんな配慮にも限界はある。編集部で話を聞いた30代男性のAさんには、数年前に肝を冷やす経験があった。ある日、スピーチ当番が急病で休んだため、部長から「最近読んだ本でも紹介してくれ」と突然指名されたという。そこで『ピーターの法則』という組織論を紹介した。
「付せんを貼っておいた頁の『あらゆるポストは、職責を果たせない無能な人間によって占められる』という一節を読み上げたとたん、あろうことか課長が『おいお前、それは部長に失礼だろ!』と声をあげたんです。びっくりして冷や汗がドッと出ました」
当然、部長からは「それは君のポストも同じだよな」とフォローが入り、笑いのうちに事態は収拾した。課長は次の異動で更迭されてしまったそうで、Aさんは「あの件が少し関係したかもしれない」と責任を感じているということだった。