2007年春に大学を卒業して就職した若者のうち、入社3年以内に退職した人の割合は34.2%にのぼった。就職氷河期で苦労して入社したはずなのにと意外にも思えるが、1983年生まれの福嶋麻衣子氏によると、これだけ社会が不安定になれば同じ会社で何十年も働き続けようと考える若者が減るのは当然だという。
遠い未来より、近くて具体的な未来を意識
――「一生、同じ会社で働くなんて可哀相」。今、多くの若者たちがそう思っているでしょう。こういう考え方をしているから、「だから今の若い連中はダメなんだ」と言われてしまうのかもしれません。
私は両方の気持ちが分かります。若者としては、「なんで同じ会社にずっといなければいけないの? 飽きるし、つまらないし、他の仕事もしてみたい」という気持ちがある。それが正直な感想でしょう。
3年も働けば、仕事のノウハウも一通り学ぶこともできるし、次の仕事へのステップにすることもできる。3年で仕事を辞めることをネガティブに考えるのではなく、ポジティブに捉えているのです。
そう考える若者たちは、社会の厳しさをよくわかっていないのかもしれません。「俺、もうこの会社で学ぶことはないっす。これだけやれば十分っす。もっとやりたいことが他にあるんでこれで新天地に旅立ちます」。本当にそんなことを思っているのです。
「会社に就職して、一生会社のために働き続ける」ことを最初から馬鹿にしている部分があります。会社で取引先にペコペコしている上の世代を馬鹿にしている。「なんで俺たちが会社の歯車にならなきゃいけないの?」とも考えています。
だから簡単に会社を辞めて、つい旅に出てしまったり、カフェを開業したりしようとする。今よりも自分は、もっといい場所に行くことができると信じているのです。
ただし、それは決して不透明な未来を悲観し、刹那的に遊んでいるだけではというわけでもないでしょう。近い将来に向けて身近な目標を立て、それに向かって努力している若者は大勢います。
言うまでもなく、その努力が実を結ぶかどうかはわかりません。ただひとついえるのは、遠い未来をイメージして行動するよりも、近くて具体的な未来を意識して行動する若者のほうが多いということです――
(福嶋麻衣子・いしたにまさき著『日本の若者は不幸じゃない』ソフトバンク新書、25~26頁)
(会社ウォッチ編集部のひとこと)
福嶋氏は、秋葉原のライブ&バーを運営する会社の経営者。上の世代から「いまの若者は不幸」と言われることに対し、バブルで金儲けして遊びにカネを費やした人たちが勝手にレッテルを貼っているだけと不満顔だ。好景気知らずの「不況ネイティブ」だが、明日食べるものや着るものに困る貧しさも知らない。ネットやアニメ、ゲームでお金をかけずに楽しむことの何が不幸なのか。お金がなくとも、自分を認めてくれる仲間や場所の方が大事という。米フェイスブックの創設者ザッカーバーグと同世代。SNSの面白さが分からないオジサンに、いまの若者たちの気持ちは分からないのだろう。