映画「ソーシャル・ネットワーク」が日本で封切りとなった。これはフェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグを主人公とした物語だ。
マーク・ザッカーバーグは、1984年生まれで現在26才。ハーバード大学在学中の19歳の時、フェイスブックの前身を立ち上げた。フェイスブックは最近日本でも利用者が増えている無料のSNSだが、米国を中心に世界中で幅広い支持を受け、いまや利用者が6億人を超えると見られている。
米資産家「5億、10億じゃ、まだまだ」
そんなザッカーバーグの保有資産の価値は、米フォーブズ誌の推定によると前年の20億ドルから69億ドル、5,730億円にものぼるとされる。これは、同誌が日本一の資産家としている「ユニクロ」柳井正氏の6,310億円に匹敵する。
若いザッカーバーグが数年で資産をそこまで増やしたのは驚くべきことだが、若者が今まで考えられなかったような短期間で資産家になる例がこのところ非常に増えていることを、多くのメディアが伝えている。
アメリカにはザッカーバーグを超える金持ちが多数存在する。フォーブズ誌の米国長者番付トップ10は図のようになっている(同誌の2010年9月号の資料から筆者作成。1ドル83円で換算した)。
アメリカは日本よりも貧富の差がずっと大きい。トップ1%の金持ちが稼いだ金額を合計すると、すべてのアメリカ人の収入の39.4%になるという。
そんな金持ちの一人、ピーターソンは、投資会社ブラックストーンの創業者である。その娘のホーリーのコメントを、アトランティック誌(2011年1・2月号)が紹介している。
「ウォール街の映画が流行ったころは、30代で2億(円)、3億を稼ぐ人がいたらスゴイと言われたでしょう? でも今は、ヘッジファンドやゴールドマンサックスあたりで20億、30億稼ぐ若者はたくさんいるわ。今どき5億、10億くらいじゃ、まだまだ」
ホーリーは資産家のパーティーでの会話を再現してみせた。
「ある人が言ったの。『飛行機をシェアして所有して、さらに邸宅を4軒持ったりしたら、金が結構かかりますよね』。すると別の人が『結局、20(億円)といっても、税金を考えると結局10(億円)にしかならないのよね』と。これにはその場の全員がうなずいたわ」
閉塞するな日本の若者、チャンスはある
貧富の差が増えるのは問題ではあるが、金持ちが増えることが悪いこととは言いきれない。アトランティック誌のクリスティア・フリーランドは、最近の傾向について次の3つの点を指摘する。
1つめは、親の力ではなく、自分の腕一本で稼いだ金持ちが増えているということ。米国のトップクラスの金持ちをみても、ウォルトン家(ウォルマートの創業家)を除けば、他は自分でビジネスを興したか、親の事業を大きくした人ばかりだ。個人の努力次第で金持ちになるチャンスがあるのは、よいことだという意味だろう。
2つめは、米国だけでなく中国やインド、ブラジルなどの新興国にも同じくらいの金持ちが現れているということ。ビル・ゲイツを抜いて世界一の金持ちになったのは、前回紹介したメキシコの電話王、在外レバノン人のカルロス・スリムだ。
3つ目は、金持ちが以前にも増して、積極的に寄付をするようになっているということ。ザッカーバーグも2010年12月、公立学校に83億円の寄付をすると宣言している。
いまや世界中が「アメリカン・ドリーム」をつかむ可能性を持っているといえる。日本は閉塞感に満ちていると言われるが、世界に目を転じればチャンスはいくらでもある。日本の若者にも気力・体力・知力の限りを尽くして頑張ってもらいたいものだ。
小田切 尚登