50代、スマートフォン中毒 片時も手放すことができない

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   印刷物の企画・制作を行う小さな会社を経営するAさん。仕事中はもとより、四六時中、片時もスマートフォンを手放しません。部下のBさんが呆れ気味に言います。

「冗談じゃなく、食事や飲みに行く時も、必ず片手に持って常に操作してますね。打ち合わせや企画のメモはもちろん、ツイッター、SNSに始まって、移動中にゲームやってることもあるし、画像はしょっちゅう撮ってるし、極めつけはレコーディングダイエットの記録」

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メールにツイッター、レコーディングダイエットも

いちど始めたら引っ込みがつかなくなる
いちど始めたら引っ込みがつかなくなる

   50代前半のAさんがスマホを入手したのは、去年のGW明けでした。先に持っていたBさんに、それまでにも使い勝手や短所などについていろいろ訊ねていたそうです。

「あんまり聞いてくるんで、そろそろ買うのかなとは思ってましたけどね。GWに入ってすぐに買い、家族旅行にも持っていったそうです。その間にいろいろいじり倒して、一気に使い方を覚えてきたみたい」

   それにしても、現状を見ていると、「スマホ中毒、スマホ依存にしか見えない」とBさん。いい歳をした会社経営者ということで、さすがに一定の分別はあるため、業務への支障をきたすことはないものの、端で見ていて滑稽な気持ちになることがあるのです。

「しようと思ってなくても、近くにいるし、同行することも少なくないので、つい思わず観察してしまうんですけど。最初は『オレってスマホ持ってんだぜ、イケてるだろう』みたいな、ミーハーな感じなのかなと思ってたら、そうじゃないんですね。どうも、スマホを手にして何かの操作をしていないと、不安になって落ち着かないようなんです」

   一服するタイミングでメールチェックやツイッターを見るなど、スマホをいじるのはもはや当たり前。会話中でさえ、企画の過去の事例やスケジュール確認などにかこつけて、とにかくスマホを触りたがるのだとか。

   仲間内で遅くまで飲んだ時のこと。帰る方向が一緒だったので、Bさんがタクシーに同乗すると、Aさんは暗い後部座席にいてもなお、まだ何だかコチョコチョといじっていたのだそうです。

「訊くと、レコーディングダイエットの記録だと。そういえば、飲んでる間も何やらメモのようなことをしていたんですが、それは酒の量や食べた物をいちいち書き留めていたんですね。
まあ、もうどうでもいいんだけど、ただ私の目には、スマホを触っていたいから、わざわざレコーディングダイエットをやっているっていう、本末転倒な感じに見えちゃって仕方がない」

   子どものころ、欲しかったおもちゃを買ってもらって抱いて寝た…。Bさんの話を聞いていて、そんなことを思い出しました。

井上トシユキ


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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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