NTTドコモは1月28日の決算発表会見で、2010年度のスマートフォン販売台数目標を上方修正して250万台程度とほぼ倍増させ、11年度の販売目標を600万台とすると発表しました。
販売目標や加入者、購入者の数字が倍々で伸びていくのは、ネットが普及の端緒についた97~98年ごろからミレニアムまでの様子とよく似ています。あと3年も経てば、日本の携帯電話(いわゆるガラケー)にとって代わって、スマホ(スマートフォン)がケータイ端末の主流となっていることでしょう。
課金形態が変わる「路線変更は決定的」
都内でガラケーのコンテンツ開発に携わってきた30代の会社社長も、そうした流れに太鼓判を押します。
「これまで、ガラケー向けの無料公式コンテンツの開発に関わってきましたが、昨年から次第に様子が変わってきましてね。『ガラケーからスマホへ』という路線変更は、もはや決定的になりました」
この会社では、端末画面に表示されるティッカー向けにニュース原稿を編集したり、グルメや街の噂などの企画もの、ちょっとしたゲームなどを制作してきました。
しかし、年が明けて、コンテンツ配信会社から「今後は発注が激減するかも」と伝えられたそうです。
「いままでの無料公式コンテンツは、特に現役社会人層に対するキャリア(通信会社)変更の防止という意味合いがありました。要するに自社PRの一環という位置づけなので、キャリアも(無料を維持するために)多少の出費はいとわなかったわけです。
ところが、これからはスマホへの端末変更が大前提となる。スマホだと、何も無料でコンテンツをキャリアから提供しなくても、専用アプリをつくったうえで誰もが自分で課金できます。
コンテンツ配信会社にとって今後は、われわれのような無料向けのコンテンツを手早く安くつくれるところではなく、課金に値するだけのコンテンツを提供できる、あるいは開発できるところが重視されていくことになるのです」
「無料から有料へ」常識は変わるか
「ガラケーからスマホへ」とは、ネット上にあるコンテンツの利用は無料というこれまでの「一般常識」を、ガラリと一挙的に変えようという戦略でもあるということです。
新聞がなくなる、既存マスコミはジリ貧などと、盛んに喧伝されたことがありました。それはあまりに単細胞な考え方だと、鼻白む思いがしたものです。
コンテンツへの課金という、ネットバブル以降の最大の懸案が「一般常識」となっていけば、必要な、あるいは価値のある情報やコンテンツを、紙やIT機器、文字や動画といったその時々に都合のよい形態を使って、人々はお金を払って利用していくでしょう。
さまざまに用意され、張り巡らされた情報網から、流通し飛び交う情報をユーザーが選びとって利用していく、文字どおりの「選択の時代」が幕を開ける、というイメージでしょうか。
そのなかには、悪質なもの、悪意のあるもの、騙そうとする「為にする」ものも、当然、含まれます。ユーザー側のリテラシー、自己責任も、さらに問われていくことになりそうですね。
井上トシユキ