ツイッターやフェイスブックなど新しいネットサービスが話題になるたびに、「これってなんかに使えないかな」と言い出す上司がいるのでは。しかし他人が火をつけたブームに飛びついても、自社でモノにできる確率はそう高くない。
中川淳一郎氏はネット時代には、企業自身が話題の発火点となる「ニュース」を発信することが効果的であり、そのために古くからある「広報」の機能に力を入れるべきと主張する。
「クリック競争」で決まる企画の良し悪し
――これまで企業の広報部は長きにわたり、予算が少なく、「無料の宣伝」などと軽く見られてきた。
事業部や宣伝部が作った企画や商品情報を広報担当者に回し、「プレスリリース書いといて」などと言われては、
「本当にお前、商品のこと分かってねぇよな」と舌打ちされ悔しい思いをしてきた広報マンを、私は何人も知っている。
広告費が少ない場合、宣伝部の人が「だったらこれ、広報からプレスリリース出して、知り合いのスポーツ新聞記者にでも書かせればいいんじゃね?」などと安易に記事化を押し付ける例も何度も見てきた。
とかくバカにされがちだった企業の広報部だが、実はネット時代には活躍する可能性が生まれてきたのである。
何せ、ネット時代以前のメディア露出は基本的には多額の広告費を払った企業か、あまりにも画期的な商品・サービスを生み出した企業しかメディアから取り上げられなかったのだ。
それは、4マスのスペースが有限であり、しかも第三者から取材をされなくては露出されなかったからだ。記者の側は「これは社会的に価値がない」と思うため、記事にしなかったのだろうが、果たしてその判断は正しいのか?(略)
私は、企業や個人が自社媒体を持つことができたことも素晴らしいことだと思っている。たとえば、上司が「こんな切り口で情報を出せるか、バーローめ」と部下の発案を却下し、その上司の言ったとおりのことが自社HPにアップされたとしよう。
だが、まったくアクセスがなかったとしたら、その上司の言っていることは「世間的にはウケないこと」ということになる。逆に、上司がダメ出しをした企画や切り口がネット上ではウケることもある。その場合は部下の勝ちである。部下の企画はフェアなクリック競争で勝ったのである――
(中川淳一郎著『ウェブで儲ける人と損する人の法則』ベスト新書、70~72頁より)
(会社ウォッチ編集部のひとこと)
ネットニュースの編集者でもある中川氏は、ネットで話題を獲得するためには「新聞文脈」とは異なるユーザー本位の視点が必要だと指摘する。それが「ネット文脈」だ。「突っ込みどころがあるもの」「B級感があるもの」「エロ」「美人」など11項目にのぼるが、詳しくは本書で。実際のプレスリリースを、ネット文脈に合った見出しに変更する例も掲載されている。過去の広報は「マスコミ対策」だったのが、ネット時代になって一般ネットユーザーをも対象とした「広く報じる」という本来の姿に戻ったというわけだ。