相手に結論を迫る「クロージング」は、稼げる人の命だ

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   仕事で相手に結論を迫ることを「クロージング」といいます。お客様に商品の説明や価格の提示を終え、契約書を締結するときによく使います。社内でも、上司にプロジェクト予算の決裁を得るようなときに使われます。

   相手があることなので思うようにいかない場合もありますが、途中のプロセスばかり頑張ったと主張していても、クロージングができなければ成果を上げたとは言えないでしょう。

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結論を迫らないのは「お互いにとって不幸」

すべての準備は「クロージング」のために
すべての準備は「クロージング」のために

   商品説明や企画プレゼンを得意とする人でも、クロージングを苦手としている人は少なくありません。以前お会いした広告代理店勤務、20代半ばの男性Kさんも、クロージングの段階になるとお客様に連絡するのが億劫になってしまうと言っていました。

   契約を締結するためには、こちら側の条件を受け入れてもらう必要があります。その時に「相手に嫌われたくない」という気持ちが強くなって、腰が引けてしまうのだそうです。契約を取るための世間話やプレゼンだったはずなのに、おかしなことです。

   どうやら「断られる」のが怖いようです。その結果を会社に帰って報告し、上司や同僚から「こいつはダメだなあ」と思われるのも不安。恐怖すら感じています。それで、いつまでも世間話でつなぎ、たまに「あの件、よろしくお願いしますね」と言うことしかできません。

   仕事で稼げる人は、クロージングに恐怖感を持っていません。私がお世話になっている先輩経営者は、「結論を迫らないで無駄な時間を過ごすことは、お互いにとって不幸なことなんだよ」と言っていました。

   自分の都合だけを押し付け結論を急ぐことは、相手にとって不快なことですが、スピーディにタイミングよく結論を導き出すことは、どっちに転んでも「お互いにプラス」という考えを持ちましょう。ここぞというときには、

・「今なら、いいタイミングですね」と、相手に頃合いのよさを伝える
・「早く導入されたほうが効果は高くなります」と、早期の判断のメリットを強調する
・「決断をすることが課長のお仕事ですよね」と、相手が逃げられない状況を作る

などのトークを使い分けるとよいでしょう。

   なおクロージングには、「始めに大きな要請をして、断られたあとに本来の交渉に移る」「小さな要請を受け入れさせつつ、徐々に大きな要請をする」などの心理テクニックもあります。小手先だけでやろうすると相手の信頼を損ねますが、研究するのはよいことでしょう。

「値切り」には簡単に巻き込まれない

   クロージングは「お互いにとってメリットがある」ことのはずですが、苦手意識を強めるもう一つの理由があります。それは「価格交渉」という段階があることです。

   商品や企画、サービスの説明を聞いた後、お客様は価格を見て、「費用対効果」を検討します。この段階で「高いな」と思われてしまえば、「やっぱりやめようか」とか「もう少し安かったら考えるけど」などの条件を提示されるわけです。

   嫌われるのが怖い営業マンは、ここであっさりと「値切り」の話に巻き込まれてしまいます。しかしそれでは、営業マンの「稼ぎ」を犠牲にすることになることを忘れてはなりません。

   誰しも少しでも安い方がいいのは当たり前ですから、心理的な障壁を崩すために、その場で譲れる範囲を決めておくことは必要です。ただ、値切りが「商品の価値」を納得できていないための断り文句であれば、別のアプローチが必要です。

   違う質の商品や、付加サービスの追加を提案したりすることで、価格を下げずに交渉した方がよい場合もあるかもしれません。

   私はこれまで、何千回というクロージングをしてきましたが、ときにはドラマチックな場面にも遭遇しました。お客様にとってメリットがあると信じて提案したのに「必要ならこっちから連絡するから放っておいてくれよ」と冷たく突き放されたこともあります。

   ダメで元々と捨て身で提案したお客様から、「そこまで言うのなら君に任せてみようか」と涙が出るような言葉をいただいたこともあります。仕事上の生々しい本音が引き出されるクロージングは、稼げる人にとってまさに仕事の醍醐味が感じられる場なのです。

高城幸司

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高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
「高城幸司の社長ブログ」
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