日経HRは、都内の主要大学・大学院に通う2012年3月卒業予定者を対象に、就職活動に関する意識調査を実施した。行きたい業界の1位は「商社」、行きたくない業界の1位は「フードサービス」だった。
フードサービスの「行きたくない業界」1位は2年連続で、答えた人の割合も前年の15.9%から21.3%へと急増。昨年は外食チェーンにおける独特の新人研修がネットで話題となったが、こういった要素も影響したのかもしれない。
「行きたくない業界はない」も急増
消費者の視点から見れば、フードサービス業界の「経営努力の恩恵」を受けている人は少なくないだろう。1990年に一杯400円(吉野家)だった牛丼並盛りは、いまでは280円(すき家)で食べられる。
そのしわ寄せの一部は、働く人が担っている。フードサービス業界は、直近5か月連続で前年売上げを上回るなど復調を見せているが、不況や競争激化の影響でコストカットを進めており、少ない従業員で多くの業務を処理せざるをえない。
外食チェーンの社員が過労死を認定されたニュースを読んだり、ネット掲示板で厳しい労働環境を指摘する書き込みを目にしたりすれば、躊躇する気持ちも分かる気がする。求職者のイメージアップのためには、業界を挙げて改善すべき点もあるだろう。
とはいえ、人気ナンバーワンの商社も楽な仕事ではない。経営が安定した大手総合商社に入るためには、外国語などの高い専門スキルが必要な狭き門だし、仕事も楽とはいえない。中堅・中小の専門商社で卸売りを担当すれば、販売先への気遣いは欠かせない。
ときには商品を納入してもらうため、「行きたくない」と言っていたフードサービス会社の担当者に頭を下げなければないときもある。
かつては、外食チェーンでは店長は高卒、内勤は大卒などの切り分けがあったが、大学進学率が50%を超える中、それを守ることは困難になった。最初から「これまで大卒以外の人たちが支えてきてくれた仕事」も当然視野に入れておくべき時代になったのだろう。
これを反映してか、「行きたくない業界はない」と答えた人は、09年の17.5%から22.2%へ、5%近くも増えている。