「日本の生産性」は、なぜこれほどまでに低いのか

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   先日発表された「労働生産性の国際比較2010」(日本生産性本部)によると、日本の労働生産性はさらに低下し、OECD加盟33か国中22位となってしまった。

   「俺は一生懸命頑張っているのに!」と憤懣やるかたない人も多いだろう。というか、僕自身、日本のサラリーマンほど真面目に働く労働者を知らない。では、なぜ日本人は一生懸命働くにもかかわらず生産性が低いのか。

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バラマキで企業が抱え込む「社内失業者」

   理由は簡単。頑張っている人がいる一方で、そうじゃない人がいるためだ。“ノンワーキングリッチ”とか“ただ乗り社員”とか“窓際正社員”とか、いろいろな名で呼ばれるが、ここでは「社内失業者」と呼ぶことにする。

   彼らは、職場にまぎれていることもあれば、事業部全体が巨大な社内失業者の塊であることもある。完全に貢献度ゼロの人もいるが、それぞれの従業員の中に広く薄く散らばって存在していることもある。誰だって自分の担当業務の中に「これって意味あるの?」と思っている仕事が一つくらいはあるだろう。

   以前も書いたように、日本国は社会保障を民営化して企業に丸投げしているので、社内失業者を失業者として社外に放り出させるわけにはいかない。よって、雇用調整助成金等のバラマキで、100万人分以上の社内失業を企業に抱え込ませている。

   これが、日本の労働生産性が低迷する理由だ。

「社内失業者も失業者も、どちらも同じ失業者じゃないか」

と感じる人もいるかもしれないが、決定的な違いがある。

   なったことのある人は分かると思うが、後者は再就職のために涙ぐましい努力をする。リーマンショック後に外資をクビになった人の中には、この不況期にあっても留学等で着実にキャリアアップにつなげようとする人が少なくない。

   一方、社内失業者はどうだろうか。彼らは目立たないように息をひそめ、“ノンワーキングリッチ”とか“城繁幸”とかいったキーワードを目にするたびに、びくっとしているだけだろう。

   まあ、中には頑張っているという人もいるのかもしれないが、突き詰めれば彼の言う頑張りは「自分の仕事はとても有意義だ」と装うことに費やされているはずだ。

   よって、いつまでたってもあまり大きな進歩は見られない。

できる人は十字架を背負うな、新陳代謝を促せ

   さて、こういった状況下で、常に一生懸命頑張っているA氏がいたとしよう。社内にはずっと赤字続きの事業部やノンワーキングリッチがいて、組織全体でみれば生産性はとても低い。

   当然、人件費が安いことに加え、「社内失業者?なにそれ?」という新興国企業との国際競争が激化するにつれ、さらなる残業によってカバーするしかない。A氏の残業は増える一方だろう。

   ただし、新規採用による人員増加は望めない。日本が終身雇用を取る限り、そして日本経済の先行きが不透明な限り、企業は新規採用より既存社員の残業で対応しようとするからだ。

   こうして、「仕事のできるサラリーマンA氏」の両肩には、“低生産性”と“日本経済の先行き不安”という2つの十字架が重くのしかかる羽目になる。

   あなたがA氏の立場の人間なら、すみやかな転職をお勧めする。日本国内にも、事業内容や従業員の処遇を常にチェックしている企業は探せばたくさん存在する。

   そうやって多くのA氏がいなくなった組織は立ち行かなくなるだろうが、JALのようにいっぺん底まで落ちることで、一気に再生に舵を切ることになるはずだ。

   それもまた、新陳代謝の一環である。

城 繁幸

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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