「上の娘が就職で地方へ行っちゃったでしょ?毎日毎日、とにかく心配で、しょっちゅうケータイでメールを送るのよ」。神奈川県に住む50代の主婦、Aさんが友人のBさんに話しています。
Bさんは、Aさんの娘さんよりも少し年上の息子さんがいるらしく、こう言いました。
「ウチのは息子だけどさ、やっぱり大学に行って一人暮らしを始めた時は心配で、何かあってもなくても、やっぱりメール送ってたけどね。むこうにしてみれば、単なる“おばさんからの鬱陶しいメール”ぐらいにしか思ってなかったみたいよ。張り合いがないったらないわ」
「中学生の娘の気持ちがいま分かった」
「やっぱり、そうなのかしら」とAさん。
「お昼時とか帰宅している頃とか、迷惑にならない時間に送るようにしてるんだけど、ぜんぜん返信が来なくて。それが、もう、気になっちゃって気になっちゃって」
それで、Aさんは外出時はもちろんのこと、掃除や洗濯をしている時までもケータイが手放せなくなっているのだとか。
「下の娘が中学に行ってた頃かしらね、ご飯時にもケータイを手放さなくて、ピシャッて叩いて怒ってたんだけど、その気持ちがいまになってよくわかるわって下の娘に言ったら、『バカねえ、今さらいい歳して、何言ってるの』って呆れられて…」
子どもを思う親の気持ちが高じて、かつての娘さんと同じケータイ依存になってしまっている。
負うた子に教えられ、ではないですが、そのことへの警告だとしたら、下の娘さんからすれば、さぞや皮肉なことに思えたでしょう。
同じように、周囲からケータイ依存を心配されているのが、60代の男性で会社社長のCさん。
次は「最近話題のツイッター」に挑戦
Cさんは、つい先日、スマートフォンに買い換えました。
「そうしたら、これが面白くってさあ。若い社員から『スマホはケータイというより手軽なパソコンですよ』って教えられて、それでどんなものかって試すつもりだったんだけど。うん、スマホっていうんだね、若い人たちは」
Cさんがハマっているのは、各種のアプリとウェブ。
「『セカイカメラ』ってのは、あれは面白いねえ。あ、あのGPSってのも、自分がいま歩いているところを地図で表示して、リアルタイムで見れて面白い。そうそう、ちょっと思いついた調べものもすぐにネットで検索できるし、それに、知ってる?ボイスメモって言って、考えごとを声でメモしておくこともできるんだよ。面白いよねえ」
若い人にしてみれば、そんなの当然じゃん、昔からあるじゃん、というようなことも、中高年にしれみれば“いま、ここにある、昔のSF”という感じなのでしょう。
最近になって、スマートフォンはもとより、ガラケーも使い勝手がとてもよくなっています。そうしたことで、中高年の生活のなかにもケータイがすっかり定着している様子がうかがえます。
「今度は、あれ、最近話題になってるツイッター?あれをやってみようと思っててね」とCさん。
うーん、ひょっとして来年あたり、中高年のケータイ依存が社会現象になってるかもしれませんね。
井上トシユキ