日本国内の企業で働くビジネスパーソンから「年収」や「労働条件」などの情報を集めてインターネットで公開している「キャリコネ」が、クチコミ情報を基にした「社員が嘆く『自分の会社はブラック企業』」をウェブサイトに掲載している。
「入社したら半年以内に95%退職」
最初に紹介されているのは、マンション建設会社T社の首都圏支社に勤めるAさんのエピソード。同業他社を含め、会社の実名で勤務実態が掲載されている。
Aさんの残業は毎月100時間を超えるが、45時間以上の残業を申請できない。上司から「結果が出なければ休日も働け」と言われているが、会社に記録を残せないので、タイムカードを押さずに休日出勤している。
半年間受注がない社員は「要注意リスト」に載せられ、14カ月間受注がない場合には会社を辞めるか、契約社員に身分変更させられてしまう。
薄給と厳しい労働環境に納得できないAさんだが、ある地主さんからは「同業のD社は夜中の11時に来る」と迷惑がる話も聞くとか。それだけ業界内の競争が激しいということだろう。
キャリコネの会員登録を行うと、その他の会社の「ブラック」ぶりも閲覧できる。
「100人入社したら半年以内に95人は退職」
「売り上げがないときには自社製品の購入を強要される」
「設備管理を無資格者に行わせている」
「勤怠管理が二重帳簿で行われている」
「支社長や上司の誕生日にはプレゼント代5000円が徴収される」
ブラック企業の定義が明確でないため、「社長がワンマン」「業績評価が厳しい」といった会社と、「明らかな違法経営が行われている」会社が混在している。後者の場合には、事実であれば早急に改善することが必要だ。
女性社員に「ブス」「バカ」「お茶汲み」
キャリコネの登録会員は、2010年12月1日現在で約6万人、蓄積された企業クチコミや給与明細情報は10万件を超えている。今回の呼びかけには、20~40代の会員から短期間に130件以上の情報が寄せられた。
運営会社グローバルウェイの各務正人氏によると、今回公開できなかった情報の中にも、経営者や上司による悪質な行為が見られたという。
たとえばセクハラ被害について、女性の登録会員から、
「新人のころ、飲み会の席で上司に胸とお尻を思いっきり揉まれ、みんなの前で胸の大きさについて言われた」
「社長が女性社員に対し『ブス』『おバカちゃん』『おい、お茶汲み』などと暴言を吐いている」
などの行為が告発されている。
また、パワハラで目につくのは、上司の意見に異を唱えたために過重な業務を命じられて退職に追い込まれるパターンだ。周囲の同僚たちも、明らかに理不尽と思っても口を挟むことは難しいのだろう。
このようなハラスメントについては、事実確認が難しいものもあり、「過激な内容のものは直ちに公開せず、今後精査して会社の実名とともに公開すべきものを判断する」ということだ。
なお、キャリコネには企業に批判的な内容ばかりでなく、客観的な情報や、働く人にとって魅力となる情報も集まっている。
サービスのねらいは、会員からのクチコミ情報を適宜公開することで、「日本企業の労働環境の改善につなげること」。各務氏は「会社の中でおかしいと感じたことがあったら、ぜひ正確な情報を書き込んで欲しい」と呼びかける。