弁護士の資格を有しながら、企業の社員や役員として働く「企業内弁護士」。日本弁護士連合会は2010年11月に発行した『弁護士白書』の中で、この企業内弁護士の実態についてアンケート結果をまとめている。
回答した1196社のうち、弁護士を採用している企業はわずか47社。うち31社は1人のみ採用していたが、5人以上採用している企業も7社あった。
圧倒的に多い「顧問弁護士で十分」
採用時の弁護士経験年数は、「司法修習終了後すぐ」という企業が20社。「5年以上」の弁護士経験者を採用している企業が23社。実務経験のない新人弁護士を採用する企業が半数近くある。
配属先は「法務部」がほとんど。採用の満足度は、「大いに満足」「満足」「どちらかというと満足」を合わせると87.5%と高く、特に「法律に関する基本的な知識を有している」「論理的な思考力を身につけている」点が評価されている。
年収は、司法修習終了後すぐ入社した新人の場合「500~750万円未満」が最多だが、「750~1000万円未満」が3社。弁護士経験4~6年で3000万円以上、10年以上で5000万円以上という人もいた。
一方、現在弁護士を採用していない企業1149社に今後の予定を尋ねたところ、「採用には消極的」が57.6%、「関心はあるが具体的に検討していない」が37.5%で、合わせて95%を超えている。
採用に消極的な理由は、「顧問弁護士で十分」が73.9%。社外の弁護士事務所と顧問契約を結び、必要なときに相談できる体制があれば十分と考える企業が多い。
ある報道では、社内弁護士の「高額な報酬や使い勝手の悪さ」が企業側が「背中を向けた」理由に挙げられていたが、それ以前に自社で弁護士を雇用する必要性を感じていないのが現状だ。
日本企業「新卒でキャリア積んでもらいたい」
日弁連によると、日本の企業内弁護士は、2010年6月で435人。100万人の弁護士のうち約8万人が企業内に勤務しているといわれる米国と比べるとまだまだ少ないが、2年前と比べると170人近く増えている。
ある企業の人事担当者によると、これまで日本企業の法務部には、弁護士資格を持つ社員は稀だったが、この割合を増やす企業が徐々に増えているという。
背景には、海外取引などの契約業務が高度化している事情がある。また、海外での独禁法違反などで数億円の罰金を支払う日本企業もあり、コンプライアンス部門に弁護士を置いて法的リスクに目を光らせている企業もある。
司法修習直後に採用するのは、「他の新卒社員と同じ給与体系で雇いたい」という事情から。また「社内の事情や業務の特質を十分理解してもらうためには、新卒からキャリアを積んでもらうのが望ましい」という考えも根強い。
実務経験を積んだベテラン弁護士や、他社で勤務した企業内弁護士をヘッドハンティングする外資系企業と比べて、日本の企業内弁護士は若い人が多い。
外資系企業のように「法務部員は原則、弁護士資格を有している」状態が当たり前になる時代が来るだろうか。
日弁連でも「弁護士のための華麗なるキャリアプラン挑戦ガイドブック」などの広報資料を作成し、企業内弁護士など資格者の多様な働き方について情報提供をしている。