「稼げる人を育てられる人」が会社を大きくする

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   会社において、自分の力で稼げる人が望ましいのはもちろんですが、部下や後輩に稼がせたり、自力で稼げる力をつけさせたりすることも、大事な「稼げる人」の要件です。「人を育てられる人」がいなければ、会社は安定して成長できません。

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若手も甘いが、先輩や上司も認識が足りない

自分のコピーを作ることが育成の目的ではない
自分のコピーを作ることが育成の目的ではない

   リーマンショックの痛手から、ようやく回復のきざしを見せている日本経済ですが、職場レベルで活気が戻る気配を感じていない人も多いでしょう。ここ数年のリストラが組織にもたらしたひずみは、相当に大きなものがあるからです。

   人員が削減され、新規採用も抑制されて、残った人たちにも大きな負担がのしかかりました。多くの会社では、リーマンショック当時の若手が中堅に成長する間の、がむしゃらな頑張りに頼ってきました。

   余裕が出てきた会社は新人を採用し始めていますが、配属先でていねいに育成する余裕はありません。若手の中には簡単なマニュアルだけ渡されて、先輩や上司に放置されたままになったり、理解できない指示をいきなり受けたりして、嫌気が差して退職する人も出ています。

   会社の苦しい時期を支えた人たちから見れば、「最近の若い者は甘すぎる」と感じるようです。しかし、この対立は双方に問題があるものとはいえ、先輩や上司の責任も重いと言わざるを得ません。

   問題なのは先輩や上司自身が、若手を育てることが仕事の一部であると十分認識していないことと、何をどう教えればよいのかきちんと理解していないことです。

   特にこれからの中堅社員には、自分がきちんと教わってこなかったことを含め、部下や後輩をいかに効率的、効果的に育成するかが求められます。

   いまの上司はロクな仕事をしていないかもしれませんが、このまま年を重ねるだけでは、彼らのようなポジションすら得られません。自分よりも若い人たちの育成に成功して初めて、会社が安定することを忘れてはなりません。

「自分に経験のない仕事を他人にさせる」スキル

   若手の育成方法は、主にOJT(On The Job Training。現場教育)により、仕事を通じて力をつけさせることになりますが、やり方には2種類あると理解すべきです。

   ひとつめのOJTは、先輩や上司自身がやってきたことを、後輩や部下にもできるようにすることです。仕事の基本的な進め方や、やり方のコツを教え、繰り返し慣れてもらう必要があります。

   スケジュール管理や、会社のルール遵守、「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」などを、ひとつの型としてきちんと守らせることも必要です。

   もうひとつのOJTは、先輩や上司自身がやった経験のない仕事をやらせることです。これができる会社は、若手の自発性をうまく活用して、新しいビジネスを展開できる力を生み出すことができます。

   目的や目標、制約条件を与え、その達成方法を自ら考えさせ、実行推進させながら、さまざまな仕事に応用できる「問題解決」の手法を身につけさせるわけです。

   このとき先輩や上司に必要とされるのは、仕事が正しいステップで確実に行われているのか確認したり、発想が行き詰ったときにサポートしたりするための「質問力」です。

   最近の若い社員は、学生時代から塾などで個別指導を受けており、適切な指導をすれば「昔よりも素直でマジメで、すぐに身につける」と評する小売業のトレーナーもいます。

   このほか、仕事や組織に向き合うマインドを醸成することも中堅以上の大事な仕事です。目の前の仕事を確実にこなすことも重要ですが、ある一定以上のポジションの人には「与えられた仕事さえ済ませていればよい」という段階を脱するよう促すのも、先輩や上司の役割です。

高城幸司

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高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
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