「ゲーセン世代」の高齢者は何して遊ぶ

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   関東地方の某市にある喫茶店のマスターAさん。公共交通機関のシルバーパスがもらえる年齢ですが、趣味はパソコンの自作とインターネットです。もちろん、ケータイも日々、使いこなしています。

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60代と70代との「大きな違い」

   少年時代、父親に手伝ってもらいながらラジオを自作したことで電気・電子工学に興味をもち、一浪して入った大学では回路設計を学びました。

「ちょうど僕らが社会人になる頃だから、1960年代半ばだね。新幹線が走ったり銀行のオンラインシステムの構築が始まったりで、コンピュータの時代が来た、って感じだったのね。
それで、作るよりも売る方に興味がでてきて。どこまでコンピュータが普及していくか、この目で見たい、ってね」

   そう感じたAさんは、外資系コンピュータ会社にセールスマンとして就職、コンピュータが職場や学校にどんどん入り込んでいく姿を目の当たりにしました。

「しばらくしてオフィスオートメーション、いわゆるOAの波が来てね。コンピュータとオフィスとは、切っても切れない関係になっていった。
そういうのを経てきているから、いまの60代っていうのは、一般に思われているよりもパソコンや電子機器に抵抗がないんですよ。その点は、ネットが普及しはじめた10年前の60代、つまり今の70代とは、ぜんぜん違うんだよね」

   なるほど、と思いました。

   そんなAさんは、スマートフォンの購入を検討中だと言います。

ケータイは若者だけのものじゃない

「この歳になると物忘れも激しくなってね。すぐにネットで調べたいんだけど、いまのケータイは画面が小さくて老人には見にくいんだ(笑)。友人のなかには、スマートフォンで将棋や囲碁の無料ゲームをやってるのもいるよ。もう、ケータイは若い人のものだけじゃないよ」

   先日、10年振りに競馬場へ足を運んだのですが、いかにも50代、60代の馬券オヤジのなかに、スマートフォンを操作している人が結構いました。

   何をやっているのか訊いてみると、オッズ(賭け倍率)や過去のデータを呼び出して見たり、ケータイ経由で馬券を買ったりしているのでした。

   高齢者向けSNSの利用者は、今年の推計で約100万人。まだ、ほとんどはパソコンからの利用でしょうが、この先、スマートフォンの普及によりモバイルからのアクセスも増えるでしょう。

   しばらくすれば、最初のゲーセン(ゲーム喫茶)世代が高齢者の仲間入りをします。

   お爺ちゃん、お婆ちゃんが、ケータイや携帯ゲーム機で「インベーダー」や「ブロック崩し」をやって暇をつぶしている。そんな姿が当たり前になるのも、実はもうすぐなのかもしれません。

井上トシユキ


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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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