「ユニクロ」のファーストリテイリングが、国内の店長と本部の管理職ら約900人全員を数年以内に海外拠点に派遣すると報じられた。「グローバルで通用する人材を早期に育てること」が目的。その一方で、来日する外国人留学生に研修を受けさせ、即戦力として活用しようと考える会社もある。
大京「新卒採用の4人に1人は外国人」
中国などアジアの富裕層が有望客として浮上している日本の不動産市場。この動きを受けてマンション販売大手の大京では、2011年3月末までに年間5人程度の外国人を採用する予定だという。全体の新卒採用数は約20人、同期入社の4人に1人は外国人となる。
外国人顧客向けの商品企画力や販売力の強化がねらい。入社後はマンション販売に従事させながら、実務に必要な知識や資格を研修で取得させる。想定する求職者は、おもに日本の大学などで学ぶ「外国人留学生」だ。
現在、日本に留学している外国人は約13万人。このうち毎年1万人程度が卒業し、日本で就職している。平成21年は9,584人で前年よりやや減少してはいるが、10年前と比べると約4倍の増加だ。
留学生の中には、すでに「グローバル人材」の必要条件を満たすような学生もいる。10年10月22日の「とくダネ」(フジテレビ系)で紹介された中国人女子学生は、日本語と英語、中国語が話せ、履歴書の文字や文面も日本人学生と見分けがつかない。
愛読書は勝間和代さんのビジネス書で、高い意欲も感じられる。中国の慣習も当然熟知しているので、ユニクロのように「日本人の管理職に中国語と英語を教え、現地の商慣習を学ばせる」よりも、留学生の若者を雇った方が早道ではないかと思うほどだ。
実際、企業の留学生ニーズは、ここ数年で高まっている。就職支援会社ビーコスの浅井歩氏によると、生産拠点を海外に移すメーカーが、留学生を採用して日本企業のルールや文化を学ばせた上で、現地に派遣するケースが増えているという。
参入障壁は「日本のシューカツ」
とはいえ、スキルと意欲を兼ね備える留学生でも、就職先が簡単に決まる状況ではないようだ。就職氷河期で求人数が激減しているうえ、留学生の急増に企業の受け入れ口が対応しきれていない。
留学生の全体レベルも上がっており、同じようなスキルであれば、日本語のイントネーションや話すスピードがより自然な人を採用する、という競争すら起きているようだ。
また、留学生は「自分のキャリアは自分で切り拓く」という意識が強く、日本企業に数年勤務した後は、母国に帰ってより条件のよい仕事を目指す人が少なくない。そのため、終身雇用を前提に徒弟制のようにして仕事を教えるやり方が合わず、数ヶ月で退社してしまうケースもある。
ビーコスの浅井氏は、日本独特の就職活動パターンも壁になっていると指摘する。世界的にレベルの高い母国の大学を出て、日本の一流大学に入ったものの、研究と生活に慣れたころには、すでに就活に乗り遅れている。
大学などからの情報提供が不足しているほか、留学生自身のプライドが高く、マイペースを崩さないことも原因となっているとか。「日本のシューカツ」が結果的に参入障壁になっているのだ。
しかし、今後は少子化の影響を受けて、日本人の若者の生産人口が減少していく。これをカバーしつつ経済のグローバル化に対応するために、企業の留学生ニーズは今後徐々に高まるだろうと、浅井氏は予測している。