「能力ないんじゃない?」残業時間をカットする上司

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   厚生労働省が2010年11月6日(土)に実施した「労働時間相談ダイヤル」。各都道府県の労働局には787件の相談が寄せられ、うち495件は「賃金不払残業」、いわゆるサービス残業に関するものだったという。また、「長時間労働」に関する相談も247件あり、1カ月の総残業時間が100時間を超えるものも91件あった。

   厚生労働省がまとめた「相談事例」には、スーパーで月100時間を超える残業をしているが、会社に労働時間を「正しく申告できない状況」にあるため、残業手当が一部しか支払われていないというケースが掲載されている。仮に時給1000円とすると、月10万円を超えるタダ働きが行われていることになる。

危ないのは「現場たたき上げの管理職」

勝手にカットされるのには納得がいかない
勝手にカットされるのには納得がいかない

   労働時間を「正しく申告できない状況」とは、具体的にどのようなものなのか。会社が残業時間の上限を「暗黙のルール」として設け、それを超える申告を受け付けないという場合が多いようだ。

   「相談事例」には、経理事務をしている人が、実際の残業時間を会社に申告しているのに、決まった残業時間数を超える分は残業として認められないと訴える例が掲載されている。

   工場の交代制勤務で1日4~5時間の残業が慢性化しているのに、タイムカードを契約上の「終業時間」で打刻させられているという相談も。

   都内の労働基準監督署の相談員によると、上司の裁量で残業申請がきちんと受け付けられていない場合もあるという。

「残業を事前申請するとき、『こんな仕事、なんで時間かかるの? お前、能力ないんじゃない?』と叱責され、実際より少なく申請せざるをえないという話は聞きますね。経営者や人事担当者の意識は高くても、現場のたたき上げの管理職が『法律なんかいちいち守ってられるか!』と考えるケースも少なくないです」

   あらかじめ労使協定を結び「みなし労働時間制」を導入することも考えられるが、「制度を悪用し、恒常的に5時間の残業が発生するのは明らかなのに、2時間しか残業していないとみなされている」という相談もあるという。

「業績下げずに労働時間減らす」方策あるか

   「相談事例」には、清涼飲料水の自動販売機へ商品補充作業をしている人から、

「ほとんど毎日のように1日13時間に及ぶ勤務」
「月120時間以上の残業」

を強いられているという相談例も掲載されている。

   ここまでくると、仮に残業代が適切に支払われていたとしても、プライベートの時間も確保できないし、心身の健康を害するおそれも高まるレベルだ。

   また、「相談ダイヤル」には、労働者の家族からの相談が235件(全体の30%)を占めている。本人の様子を見かねて家族が連絡したのだとすれば、深刻なケースも含まれていたのかもしれない。

   「息子が建設の現場管理や設計をしている」という人は、月100時間以上の残業をしているが残業手当は一切支払われず、休日出勤や出張も多いため、このままでは息子が過労死するのではないかと心配している。

   「夫が警備業のシステム関連の仕事をしている」という人からは、150時間を超える残業や休日労働をする月があるが、会社は労働者の労働時間をきちんと把握していないようなので、夫の健康状態が心配だという。

   平成19年の「労働力調査」では、週の労働時間が60時間以上の労働者の割合は10.3%、30代男性では20.2%にものぼる。ある社会保険労務士は、連日遅くまで残業する人が多い顧問企業に対して、

「今後、国の指導が強化される可能性もある。労働時間を正しく申告してもらうよう徹底するとともに、業績を下げずに労働時間を減らす方策を真剣に検討すべきだ」

とアドバイスをしたという。

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