ネット上で「やりがい搾取」という言葉を目にすることが増えた。従業員が仕事のやりがいを追求すると過重労働に走りがちになり、会社による搾取を許すことになるからやめるべきだという批判を含んでいる。しかし、ある調査では、「働きがいのある仕事をしていない人は、心の疲弊度が高い」という傾向も表れている。
「成長実感」の低さは「疲弊感」にも影響
NTTデータ経営研究所が働く男女1013人を対象に実施した意識調査によると、いまの仕事をする中で「心の疲弊感を感じている」人は、全体の69.7%にのぼり、特に仕事に「働きがいを感じていない人」では82.7%を占めるという結果が出ている。
一方、「働きがいを感じている人」においては、疲弊感を抱く人は58.2%にとどまり、働きがいを感じていない人との差は24.2ポイントと大きい。
疲弊感の差は、仕事上のモチベーションにも影響を与えている。疲弊感を抱かないグループでは、会社に「帰属意識を感じている」人の割合が63.8%と比較的高く、「転職を考えている」人の割合は18.9%と低い。
一方、疲弊感を抱くグループにおいては、「帰属意識を感じている」は49.7%、「転職を考えている」は53.1%となっている。
働きがいに最も影響を与えているのは、仕事を通じて自分の成長を感じる「成長実感」の有無のようだ。働きがいを感じているグループでは、成長実感を抱く人が87.9%いたのに対し、働きがいを感じていないグループでは24.5%。その差は63.8ポイントにものぼる。
このほか、働きがいを感じているグループでは、日々の仕事に取り組む価値があると感じる「価値実感」や、自分の力が発揮できていると感じる「力の発揮」などを抱く人の割合が高くなっている。
これらの結果からみると、働きがいのある仕事につく人は、そうでない人よりも幸せを感じているように見える。仕事を通じて自分の成長が感じられる人は、「働きがいがある」と感じている上に、「心の疲弊感」も少なくてすんでいるからだ。
会社側の視点からも、優秀な人材の流出を防いだり、売り上げの水増しや横領などを予防したりする上でも、「働きがい」は重要な要素になりうる。
特に中堅、中小企業では、年功序列制の崩壊で給与が上げられない中、会社にとっても従業員にとっても「やりがい」や「働きがい」に着目したマネジメントが一層重要になりそうなものだが、それでも「仕事にはやりがいなど不要」という主張は今後も強まっていくのだろうか。