なぜか届かない「不審者情報」メール

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   幼稚園や保育園でのケータイをめぐる話を、前編と後編にわけて。

   最近では、ほとんど全員の親がケータイを持っていることから、市や町が独自の「ケータイ連絡網」を構築しているケースが増えているのだとか。

   緊急時や事件が起きた時、連絡網に登録している親のケータイに、情報や呼びかけがメールで届くという仕組みです。

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行政への問い合わせは「たらい回し」

あてにしていた連絡が来ていなかった
あてにしていた連絡が来ていなかった

   ある大都市の衛星都市に住むAさんも、娘の入園にあわせて行政が運営する連絡網への加入を求められました。

   半年ほどは何もなく、そんな連絡網のことも忘れかけていた、まさにその時に事件は起こりました。

「1か月ほど前、娘が通う幼稚園がある地域で、不審者騒ぎが3回ぐらい続いたんです。私のケータイには、不審者の情報や通園、帰宅の時に注意するようにという呼びかけが2回だけ届きました。
   ところが、ママ友に聞くと、3回とも連絡が来ていた人、1回しか来ていなかった人、いろいろあることがわかったんです」

   おかしいと思ったAさんたちは、行政の窓口に確認に行きました。

「何か原因があるのなら、教えてもらって直そうと話し合ったんです。だって、私たちではケータイやメールの仕組みなんてわからないですから。それに、わざわざ市がやってるのだから、専門家もいるはずと思ったんです」

   それぞれの子どもを迎えに行った後、半日かけて相談に行った結果は「たらい回し」。

「そういったクレームはあちらの窓口に」、「いや、こちらではなくあちらへ」、「行政のサイトに連絡フォームがありますのでメールで」…。

ママたちの間で駆け巡る不満メール

   半ば強制的に連絡網へ加入させられ、情報提供は中途半端、相談に行けばたらい回しでは、親の側は不信感を募らせるばかり。

「事業仕分けの対象になるほどの規模じゃなくても、私たちの税金で運営してるんでしょう。せっかくつくったのならちゃんと運営して欲しいし、ムダなことだったら止めてもらいたいですし」

   実は、不審者騒ぎに関連して、行政のケータイ連絡網に不信感をもったのは、Aさんたちのグループだけではありませんでした。

   ただ、実際に役所の担当部署に相談へいったのは、Aさんたちだけ。

   ママたちがお迎えにいくタイミングで情報交換が始まり、あっという間に役所での対応エピソードが共有されていきました。

   そして、1週間後。 ケータイをめぐるあらたな火種が火を噴きました。(次回に続く)

井上トシユキ


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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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