あるスーパーチェーンで、女子更衣室のロッカーから、従業員の財布が盗まれました。被害者が店長に報告したところ、「鍵をかけ忘れた人にも落ち度がある」として、警察に届けないと言われたのだそうです。見かねた被害者の同僚が本部に連絡しましたが、対応は変わりませんでした。
相次ぐ自己責任論「小学生レベル」「騒ぐ方が阿呆」
被害者の同僚のひとり、mirror-jpさんは、この対応に腹が立ってしようがありません。お店の万引きは警察に引き渡すのに、従業員の財布が盗まれたら黙っているなんて。店への信頼感は、すっかり下がってしまいました。
納得がいかないので、Q&Aサイトの「教えて!goo」で質問を投げかけてみることにしました。「この業界では、これが当たり前なのでしょうか?」
この質問には、ある意味で予想通り、「当たり前」という自己責任論が相次いでいます。
「まだお若い方ですよね、きっと。もちろん人の物を盗むのは悪いことですが、大人になると鍵をかけないのは自分の落ち度になるんです」(wildthingさん)
「ロッカーに鍵を掛けなかったのですよね、小学生レベルの非常識な行為ですよね、それでいてクレームだけは、他人のせいにして声高に主張する、ご立派な考えですね」(kinkinnさん)
「騒ぐ方が阿呆です。納得いかないなら本人なり周囲なりが届ければいい。万引きの被害者はお店ですが、職場の被害者はお店じゃありませんから」(narara2008さん)
確かに万引きの被害者は会社で、財布盗難の被害者は従業員。被害届は被害者自身が出せばよいという考えもあります。
回答者のskyfangさんは、「割と良く聞く話ですね。店のイメージが悪くなると売り上げに影響しますからね。嫌なら辞めてもらって結構、って事でしょ」と解説します。
従業員から窃盗犯が出たという噂が立てば、お客さんのイメージダウンになりますし、パートタイマーが集まりにくくなってしまうかもしれません。
ただ、もしも情報が漏れるのなら、「あの店で働いていた従業員が財布を盗んで捕まったらしい」という噂と、「あの店は従業員の財布が盗まれても知らん顔らしい」という噂の、どちらがマシでしょうか。
警察に届けた方が「イメージアップ」に?
犯人は従業員の中にいる可能性が高いので、警察の捜査が入れば比較的簡単に特定できるという見方もあります。
しかし、捜査には会社の協力が不可欠。警察からは、「まずは社内で調べてもらってください」と言われたり、会社から被害届を出してもらうよう助言されたりするケースも少なくないようです。
となると、やはり会社の姿勢が問題となるわけです。質問者さんの苛立ちも理解できます。
米国の総合小売業での勤務経験があるというwoshirebenrenさんは、職場で窃盗事件が起きたときには、警察に届けたといいます。
「理由は簡単、企業のイメージアップです。パートさんはよき宣伝者ですので、きちんとした対応は店舗のイメージ戦略に大いに役立ちます」
警察に届けることで、次の事件を引き起こさない「抑止力」にも。事件の後、店は「貴重品専用庫」を設け、ルールを作って管理していたそうです。
「鍵をかけなかったのは従業員の過失。店は迷惑している」というスタンスで表ざたにしないのではなく、「従業員も重要な消費者」と捉えて警察に届けつつ、抜かりなく再発防止策を打つ方が、店としては賢い選択のような気がします。