東証一部上場のラーメンチェーン「幸楽苑」が、新卒採用の対象を卒業3年以内の既卒者まで拡げると発表した。実施するのは、2012年4月入社の採用分。採用予定130人のうち、約10人を既卒者とするという。
店長経験の先には本社勤務もある
幸楽苑は1954年、福島・会津若松市に開店した「味よし食堂」が前身。いまでは全国に約430店舗を出店し、正社員は1000人以上、パート・アルバイトは約8000人。ラーメン業界では売上高日本一の企業だ。
今回の新卒拡張により、09年3月卒で就職先がなかった人も、11年4月から最終学年を迎える大学生や専門学校生などと一緒に選考を受け、採用された場合には同じ条件で入社できる。同社では11年4月採用でも、卒業から1年以内の人を新卒扱いとしていた。
大手企業には「新卒一括採用」を行うところが多く、職歴のない既卒者の就職は厳しい。これに対し「人生のリスクが大卒時の景気に左右されすぎるのは不健全」との批判もあり、政府は日本経団連に「大学卒業後3年間は新卒扱いに」と要請していた。
幸楽苑の取り組みは、このような社会的要請を受けたものだが、ネット上には、
「外食なんてみんなブラック企業」 「仕事はキツイし給料は安い」
と、否定的な声も少なくない。
確かに新卒者は、最初にラーメン店へ配属されてまず店長を目指し仕事をするようだ。スープの仕込みや鍋振りなど「ラーメン屋さん」の修業は少ないが、接客や厨房での仕事も必要。アルバイトや資材・経費の管理も楽ではない。
しかし、店長の経験を積めば、商品原料のバイヤーや教育部門、店舗開発や経営企画部門などの仕事への道も開かれ、経営幹部へ就任する人も。同じラーメンを扱っていても、年商356億円の上場会社と個人経営の店とでは、仕事も大きく違う。
「大卒難民を救う機会をくれるなんて上等じゃないか」
「地獄で仏だな。このまま就職できなければ結婚もできない。人生終わるよ」
と評価する声も上がっている。
「大卒の仕事ではない」に反論も
とはいえ、ラーメン店で働くというとアルバイトを連想するせいか、「大学卒業してラーメン屋は情けないだろ」と蔑む声も多い。これに対しては、「少なくとも円高で大リストラ必至の輸出産業よりマシ」という見方もあるし、
「結婚退職した女性が働き出すから、外食する人は今後増える」
「アジアとか海外進出の可能性もあるしね」
と、外食チェーンの成長性を期待する人もいる。また、「こんなところで貴重な新卒カード切りたくない」という揶揄に対しては、
「チェーンは海外から安い食材を直接仕入れるのとか大事」
「自分の大卒を過剰評価するな。とにかく自分で稼いで食ってみろ」
と、仕事を通じて得られる経験を説く人もいる。同社のような取組みをする会社が増えれば、純粋な新卒カードの価値も急速に下落するかもしれない。
人とカネのマネジメントをした経験は、普通のサラリーマンより「商売センスが磨ける」という見方も。真っ先に「新卒拡張」をした同社と、既卒で入社した人材が今後どういった成果を上げるのか、興味が湧くところだ。