リクルートのワークス研究所が発行する「Works」102号が、「新卒選考ルネサンス」と題した特集を組んでいる。目を引くのは、就活勝ち組学生たちの匿名座談会。彼らの口を突いて出てきたのは、「就活の賢い切り抜け方」ではなく、痛烈な「日本の就活批判」だ。
座談会の参加者は、3名の男性。東大・理系のAさんは総合商社へ、早大・文系のBさんは情報系企業への就職が内定している。東大院・理系のCさんは、休学してITベンチャーで勤務中だ。
「面接で冴えなくても、できるやつはいる」
2010年3月卒の大学生の就職率は60.8%。多くの学生が、必死の就活対策をしながら就職先を決められずにいる中で、彼らは就職活動の「勝ち組」といえるだろう。
しかし、そんな彼らでさえ、日本企業の「就活」にはウンザリさせられたようだ。
「正直、やっているときは“茶番”としか思えませんでした」
「これで何が分かるんだろう、って」
Aさんは、4年生のときに自らの意思で留年を決めた。就職先がなかったためではなく、「研究に集中するため」だ。卒業研究を終えてから就活を始めたが、「もし3年生のときに学業で頑張ったことを書けと言われても無理。みんな3年生で何を書いているのだろう」と不思議に思ったという。
Bさんは学生時代、海外をバックパックで30カ国を回った。周囲には就活のために、サークルの苦労話をでっち上げている人もいたという。
「サークルのキャプテン派と反キャプテン派に分裂したとき、このままではいけないと思って両方の話を聞いて、仲裁に入って・・・みたいな」
面接の時間は短いので、「作った自分で十分通せる」。よいやり方とは思えないが、自分の経験や志向にじっくり耳を傾けてもらえないまま、ふるいにかけられる側としては、この程度は必要悪と考えても不思議はない。
面接の有効性については、Aさんも疑問を持っている。「面接で冴えなくても、できるやつはいる」。
文系の学生が理系の友だちに、企業が設けた「Webテスト」の身代わり受験を頼むことも。とはいえ、企業が「とても結果をきちんと見ているとは思えない」。Aさんは「結局、学校名で足切りしているだけなんじゃないか」と首を傾げる。
「新卒偏重」「一斉就活」の習慣は変わるか
Cさんは、就活をしていない。新卒重視の企業に合わせ、学生がいっせいに就職活動する状況を「なんだか気持ち悪い(笑)」と評する。
いまの会社で働くきっかけは、ブログを見た会社の社長から直接アクセスがあったため。会社の他のスタッフを含めて1回に3~4時間、何度も話し合いをして決めた。将来復学するかどうかは、「働いて、そこ(今の会社)で自分が成果を出せるかどうか、成長できるかどうかで決める」という。
AさんやBさんも、現場の仕事や企業の実態を知りたいと、期待してインターンシップに参加したが、
「会議室に缶詰になって与えられた課題を解決するようなものばかり」
「数時間ゲームをするだけで、会社のことなんかほとんどわからない」
という不満を抱いた。
Cさんは、企業側が長期のインターンシップを受け入れれば、学生たちも会社を十分理解してから就職先を決められるのにと考えるが、「みんな一斉に動くから」企業側の受け入れが難しいのだろうと指摘する。
彼らの話を総合すると、自分の志向や会社の将来性について、会社とじっくり話をしたいが、十分な時間を取ってもらえないことに対する不満があるようだ。しかし、企業の新卒偏重、学生の一斉就活という習慣が変わらなければ、そんな願いも実現しそうにない。
ただし、企業側も大量の学生から、一握りの人材を効率よく採用するために苦心しているのも確かだ。1990年には24.6%だった大学進学率は、2009年には50.2%まで上昇。2人に1人は大学に入学する時代となった。今回のようなエリート学生からの要望をすべての求職者に当てはめることは、さらに難しくなっているのが現状のようだ。