デジタル・ディバイドと言ったのも、もはや一昔前。いまや、中高年はおろか、高齢者もネットやIT機器を使いこなしています。もちろん、ケータイもそのひとつ。67歳の文筆業、Aさんは「ケータイメールは便利でいい」と言います。
コラムのネタを自分宛に送っておく
「家族や編集者と急ぎでない連絡を取りたい時、これまでなら、まず公衆電話を探して、電話をかけて、急ぎじゃないんだけどと言い訳しながら話してた。ケータイどうしのメールだと、相手を煩わせなくてすむという安心感があるよ」
急ぎでない場合とは、「翌週など先々の待ち合わせ時間を少し遅らせてほしい、出かける時に伝えたよりも帰宅がちょっと遅れる」といったようなケース。
「最初は、説明書を読んでもわかりにくいし、子どもや孫に嫌がられながらあれこれ教えてもらってた。慣れると本当に便利でいいね。
うっかり筆記具やノートを忘れて外出して、コラムやエッセイのネタが浮かんだ時、自分宛にケータイメールにメモして送っておくんだ。どうだい、賢いだろう」
私もよくそうやってますよ、というと、「なんだ、俺だけじゃなかったのか」と苦笑い。
でも、ケータイを便利に使いこなしている様子が伝わって、なんともほのぼのとした気分にさせてくれます。
60代後半、70代手前という女性のBさんは、ケータイのカメラにハマっているそうです。
「旅行や外出の途中で、記念撮影ほどじゃなくて、ちょっと撮っておきたい場面って、案外あるのよ。そういうとき、デジカメだとバッグから出して、起動させてって面倒だけど、ケータイならすぐカメラに切り替えられるでしょう」
自由に使える時間はたっぷりある
はじめのうちは、手ぶれがひどかったりピントが合ってなかったり、良い画像が撮れなかったとか。
そこで、元カメラマンの知人や、近所の写真店のご主人に、コツを教えてもらいました。
「画像のサイズやホワイトバランスを変えるとか、夜景や街角スナップならセルフタイマーを利用して手ぶれを防ぐとか。それだけのことで、他人に見せられる画像を撮ることができるのね。最近では、画像編集ソフトの使い方を習ってて、上手く加工できた時は年始や夏のご挨拶状に使ってるのよ」
よくよく考えれば、いまの高齢者はオフィスの電算化やOA化の波を潜ってきた世代。
コンピュータやIT機器の仕組みはわからなくとも、「機械」そのものは、慣れさえすれば使えるのでしょう。
なにしろ、自由に使える時間をたっぷりと持っている世代です。高齢者が新しいケータイの使い方やコンテンツを考えだす日が、近々にも来るかもしれません。
井上トシユキ