ツイッターで直訴なら「やりましょう」はおかしい

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   母親が認知症を患ってしまった、中部地方に住む自営業のAさん。同居はしていないものの、クルマを使えば20~30分ほどの距離に住んでいるので、何かあった時のためにと、母親にケータイを持たせることにしました。

「仕事柄、日中は週末も含めてクルマで移動していることがほとんど。家の電話にかけてもらっても意味がないんですよ」

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認知症の母にケータイがつながらない

   いつ、どんなトラブルが起きるかわからないこと、認知症の母親が混乱したり間違ったりして電話をかけてくることが想定されることなどから、同じキャリアなら通話料が無料というキャリアで新たに契約しました。

「それまで10年以上利用してきたキャリアを止めたので、自分としてはちょっと思い切ったんですよね」

   ところが、困ったことがありました。ある日、試しに母親へ電話をかけてみると、つながらないのです。

   慌てて母親が住むマンションに行ってみました。

「母はちゃんと部屋に居たのですが、自分のケータイを見ると、電波が届いていないんです。原因はこれか、と思って最寄りのショップに向かいました」

   しかし受け付けた店員は、本体の電源が切れていたのではないか、瞬間的に電波状態が悪くなっただけではないかと疑うようなことを言われ、最初は素直に話を聞いていたAさんも、そのうちキレそうになったとか。

「そういうマニュアルになっているのかもしれないけど、こっちだって深刻じゃなければ、忙しいのにわざわざ相談なんてしない。客商売だという意識に欠けるんじゃないか」

   20分を超えるやり取りの後、結局、家庭用のアンテナを送ってくれるということになりました。

まずは当たり前のことをやってくれ

   それから3カ月以上。アンテナはまだ届いていません。

「認知症の母親が使うと言ってあるのに。何度か問い合わせしたら、室内で電波が届かないというお客様が多くて順番待ちの状態、って言う。電波が届かないケータイって、水が出てこない水道みたいなもの。それが多いって、どういうことなんですか。何の意味もないガラクタを売りつけてるってことですかね」

   つながらないケータイの基本料金を3カ月間も払っていることを含めて、Aさんはカンカンに怒っています。

   名物社長にツイッターで直訴してみては、と言ってみたら、「冗談ごとじゃないんですよ」と即座に言い返すほどです。

「電話って公共インフラですよね。電気や水道だって、鉄道や道路だって、公共インフラってものは、事故でもなければ基本的に使えないってことはありえない。それが、普通の状態で使えないって。そんないい加減な会社の社長なんて、信用できませんよ」

   そもそも、通常の顧客窓口経由なら3カ月以上も待たされるのに、ツイッターを使えば、すぐ「やりましょう」では、オープンで公平な対応とは言えませんしね。

   とにかく、早くなんとかしてあげてもらいたいものです。

井上トシユキ


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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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