内閣府で初めて実施した「労働者の国際移動に関する世論調査」によると、外国で働くことに「関心がある」と答えた20歳以上の男女は22.0%、「関心がない」は77.4%だった。年代別に見ると、若い世代ほど「関心がある」割合が高く、20代では40.0%だった。
「この国で働きたくないからこそ脱出」
この調査について、時事通信では「外国での就労、『関心ない』8割」と、海外勤務に消極的な人が多い調査結果として報じた。
一方、日本経済新聞は「20代の4割『外国で働くことに関心』」という見出しをつけて、若手世代の積極的な側面を強調している。
外国での就労形態は、20代では「日本を中心に働き、1回~複数回外国赴任をしたい」が66.7%を占め、「外国中心に働きたい」(12.1%)を大きく上回った。
とはいえ海外勤務には言葉や生活習慣など現実的な壁も多く、「20代の4割」は必ずしも「少なすぎる、内向きだ」といえないかもしれない。
しかしネット上には、日本で出世もおぼつかない者が海外で働くなんてムリ、海外赴任をするのは大企業に入社できたエリートだけ、というあきらめの声が目立つ。
「凡人が海外行っても悲惨なだけだろ」
「技能や技術どころか語学すらできんからなぁ…」
これに対し、日本の就職環境に適応できなかったり、労働環境に不満を持っていたりする人こそ、海外を目指すべきという声もある。「わかってないなあ。この国で働きたくないからこそ、日本を脱出するんだよ」
たしかに、環境を変えて能力を発揮する人もいるし、帰国して海外経験が活きる場合もある。なにしろ、「新卒至上主義」の日本企業には受け入れられなくても、海外なら職歴の空白も問題視されない可能性が高い。
「履歴書に年齢を書く事が違法なアメリカを始めとする海外の方が、底辺のお前ら的にもマシだと思うけどなあ」という指摘にも、うなずけるものがある。
「職があるところに行くのは普通」
一方で、海外生活のハードルの高さからすると「4割は不穏なほど多い」という見方もある。そこで海外勤務に積極的と思われる人の声を拾ってみると、意外なことに「海外で色んなことを学びたい」という明るく前向きなものよりも、消極的な選択が圧倒的に多い。
「遊んでる分には日本は暮らしやすいが、働くのは嫌すぎる」
「今の政府を見て、日本から出て行きたいって奴が増えなきゃ嘘だろ」
「質の良い人材はそれなりの地位につける社会にしなきゃ、希望はない」
ネットの声だけで判断しきれないが、「海外に関心」を持つ若者のホンネには、日本の社会や労働環境に嫌気が差して、「もう海外に出るしかない」という脱出志向も少なからず含まれているのかもしれない。
「働いたら負けだけど、働かなきゃ死ぬ。そこで脱出という話。そもそも職がないし、なければ自ら創りだすか、あるところに行くのは普通。そこに若干の逃避が含まれていたとしても」
高度成長期の大手企業は、「積極的な外向き」の社員に、安定した雇用と厚い待遇を保障して海外に赴任させた。モーレツ社員の時代だ。時代が変わって、いまの海外進出組には生き延びる環境を見出すために、やむを得ず海外を目指す「逃避的な外向き」もかなり含まれているということかもしれない。
最近は、海外勤務を命じられたことを理由に、会社を辞める若者もいる。理由はともあれ、「海外でもどこにでも行きます!」という元気な声が聞けるだけでも会社にとってはうれしいはず。40%という数字の向こうには、単なる「内向き」「外向き」だけではない、若者たちのしたたかさも垣間見える気がする。