職場のパソコンでこっそりアダルトサイトを見ていたら、アダルト画像と請求画面が表示されっぱなしになった。請求に従い5万円を振り込んだけれど、画像がいっこうに消えない――。関係機関の窓口には、そんな相談が急増しているという。
「ワンクリック請求」相談件数は過去最多に
ウェブサイトをクリックさせることで、利用者の意思に反して高額な料金を請求する手法は、「ワンクリック請求」と呼ばれる。情報処理推進機構(IPA)によると、「ワンクリック請求」の相談受付件数は2010年8月に935件となり、過去最多を更新した。
利用者が知らないうちにコンピュータウイルスをダウンロードさせ、パソコンに「請求画面」を表示する手法は以前からあった。パソコンの設定を書き換え、ウイルス本体を残さない手口が現れたのは2009年1月だ。
この手口で感染した場合、ウイルス対策ソフトでは対応できず、「システムの復元」により復旧するか、「パソコンの初期化」をしなければならない。
アダルト画像を表示するウイルスに職場で感染すると、部下や同僚の目にさらされることになる。かといって社内のシステム担当に対応を頼むと、仕事中にアダルトサイトを見ていたことがばれて大問題になるだろう。そこでIPAのような機関に、
「会社に内密で何とかならないだろうか」
と、こっそり相談がくるわけだ。男性だけでなく女性からの相談もあるという。
「ワンクリック請求」の入り口となるサイトは、いまや100個にも上る。「アダルト」という単語での検索上位結果や、動画投稿サイトのコメント欄のURL、芸能人ゴシップを扱うブログやゲーム攻略サイトなど、誘導ルートは網の目のように広がっている。
引っかかるリスクは高まっている
「ワンクリック請求」が出始めたころは、文字通り「無料動画」のボタンをワンクリックしただけで、
「会員登録完了」「至急入金ください」
という表示が現れた。このような請求は法的に無効なので、無視しても問題ない。
しかし最近は、確認画面を複数設けたり、利用規約を表示させるなど、法令の要件を満たしているサイトも増えており、形式上はクリックした本人の責任が問われかねないサイトも増えている。
IPAでは感染の予防策として、ウェブサイトの「意思確認画面」で安易に「はい」とクリックしないことを挙げている。また、ウインドウズの「警告画面」が出たら、無視せずに内容をよく読み、怪しいファイルのダウンロードをしてはならない。
また、万一感染した場合でも、業者と連絡を取ることなく、各都道府県の消費生活センターなどに相談すべきだ。
最近は消費者庁の指導などにより、あからさまに違法なサイトは少なくなったが、それだけに見かけ上は普通のサイトと変わらない「ワンクリック請求」サイトに引っかかるリスクが高まっているともいえる。
利用者の意識の低さが、業者に見透かされている格好だが、くれぐれも怪しいサイトにはアクセスしないこと、職場でアダルトサイトは見ないことを徹底させたい。