大阪市のあるネットベンチャー企業で、ユニークな「遅刻抑制策」が効果を上げている。遅刻3回で「社長が母親に電話」、10回で「母親をオフィスに招待」するというものだ。実際に「オカンから大目玉」を食らった人もいるらしい。
ダラダラ勤務防止に10時出社奨励
残念ながら社名が出せないので、仮にF社としよう。従業員30人。
ウェブ制作を行うある部署では、仕事の性格上、裁量労働制が採られている。実際に働いた時間にかかわらず「みなし労働時間」分の給与が支給される決まりだ。
裁量労働制は一見自由な働き方ではあるが、ダラダラ勤務になってしまうリスクもある。クリエイティブ系には夜の作業を好む人も少なくないが、生活が不規則になるし、帰りを待つ家族にも迷惑をかける。出勤時間が遅ければ、顧客対応に遅れが生じることも。
そこで部長のK氏は、勤務時間の「健全化」を考え、部として午前10時の出勤を奨励することを提案し、部員の了承を得た。その上で部員同士の議論を通じて、次のようなルールを定めたという。
・原則として午前10時までに出勤すること
・もし遅刻をする場合には、出社予定時刻の一報を入れること
・遅刻抑制のために、罰金以外の「一番イヤなペナルティ」を導入しよう
すると部員の中から、「遅刻したら会社からオカン(母親)に電話をかけるようにしたら、遅刻しないようになるのでは」というアイデアが出た。スタッフの平均年齢は30歳。いい年をして母親に連絡されるのは、とても恥ずかしいことだ。
「もしオカンに電話されたら、オカンから電話かかってくるし、30代にもなってオカンに迷惑かけるわ怒られるわなんて絶対嫌やし、遅刻せんとこー!ってなるやろ、ということですね」(K部長)
電話でオカンに「制度説明」
細かいルール設計も楽しい。もし何の連絡もなしに遅刻した場合には「無断遅刻」とし、即刻「オカンのケータイ」に電話が入り、減点1となる。
出社予定時刻の一報を入れて遅刻した場合には「通常遅刻」として減点1とし、3つ貯まるごとにK部長の上司またはF社の代表取締役社長が「オカンのケータイ」に注意の電話をかける。
「おたくの息子さん(娘さん)、最近遅刻が多いので、お母さんからもよく注意しておいてくださいね」
という内容だ。
さらに減点が10に達すると、いよいよ「オカン呼び出し」だ。母親がオフィスに「招待」される。
「母親への電話」については制度の説明が必要になることも。本人の同意の上で自発的に行っていることを伝えないと、驚いたり不快に感じたり、おかしな会社に勤めていると怪しむ母親がいたりするかもしれないからだ。
制度の導入から、まだ2週間だが、今のところ効果は上がっているようだ。一方で、オカンに通報されてしまった人もいる。K部長も「起きたら10時」で無断欠勤とみなされ、母親から説教をされてしまった。
「堅苦しいルールを上から押し付けると、息が詰まりますよね。当面はシンプルな運用をして、例外的なケースが生じたときの処理方法などについて、これから部内で議論していきます。『自分たちの制度』を作っていくことができればいいなと思ってます」