「そんな仕事は社員がやって」 自分勝手な派遣スタッフ

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   最近は、ようやく景気が上向きつつある業界も出てきているようだ。先行きが不透明ながら、派遣スタッフの受け入れによって増産計画に対応しようとする会社もある。ところが、ある会社では現場から「社員の方が使いやすいのに」という声が上がっているという。

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穴埋めや後始末に社員が右往左往

――メーカーの工場長です。ようやく景気が上向き、最悪の状態を脱しつつあります。一時は大リストラをしましたが、いまでは増産体制に向けて工員の増員を考えられる余裕も出てきました。
   そこで現場担当者との打ち合わせで、派遣スタッフの受け入れを提案したところ、課長たちが難色を示しました。

「派遣スタッフは使いにくいから、直接雇用の社員にして欲しい」
と声を合わせるのです。
   彼らによると、以前大量に派遣スタッフを受け入れたときには、期間満了前に姿を消してしまう人が出て非常に苦労したとのこと。中には会社のロッカーに私物を置いたままにしたり、ゴミをいっぱい溜めたまま辞めたりした人もいるようです。
   作業着などの貸与物を返さないまま、数日で行方不明になった人も。派遣会社にクレームを入れるものの、連絡が取れないのではどうしようもありません。結局、穴埋めや後始末に社員が右往左往したそうです。
「仕事内容が気に入らないと、『派遣会社に言って工場を代えてもらう』と平気で言う人もいるんですよ。それに、行政の指導に沿って契約社員に切り替えてもらおうと相談すると、『いろいろ責任を負わされるのはかなわない。社員は勘弁してください』と言う人も少なくない。繁忙期でも平気で有給休暇を取るし・・・」
   現場の社員は、スキルが上達してきたスタッフに難しい仕事を手伝ってもらおうとしたら、「今回の契約に含まれていません。そんな仕事は社員がやってください」と強い調子で言われてショックを受けたそうです。
   派遣スタッフは派遣先の指示命令で動いて欲しいのに、逆に社員が振り回されている始末。とはいえ、増産計画は迫っており、どういう手を打てばよいのか弱ってしまいました。派遣スタッフのうまい使い方はないものでしょうか――

臨床心理士・尾崎健一の視点
ネガティブな感情を引き起こす労働環境はないか

   御社には、派遣スタッフのストレスを高め、ネガティブな感情を引き起こさせる労働環境はないでしょうか。たとえば、社員食堂の利用を制限するとか、座席表に「派遣1」と書くとか。ボーナス時に社員が大騒ぎするのも気遣いに欠けます。

   派遣スタッフに社員との格差を強く感じさせ、「バカバカしい」「やってられない」というような感情を引き起こさないよう配慮や便宜を図ることも必要です。

   また、コストダウンの要請があるからといって派遣料金を低く抑えすぎることも、労務リスクを高めます。欧米では「同一価値労働、同一賃金」の原則によって、雇用形態を理由とした賃金格差が生じないよう配慮されており、正社員でなくても一定水準の生活が成り立つようです。派遣スタッフの受け入れは、あくまで需要の増減に応じたものと考えましょう。人を安く使うために利用すれば、トラブルも生じやすくなりますし、社会的にも問題視されるのではないでしょうか。

社会保険労務士・野崎大輔のコメント
社員と違う使い方する割り切りが必要

   一時、派遣期間満了前の中途解約により派遣スタッフが職を失う「派遣切り」が問題となりました。企業のルール違反があれだけ横行すれば、スタッフ側のモラルが下がってもしかたないところもあると思います。派遣スタッフのマナー違反は直接または派遣元を通じて注意しつつ、会社側もルールをきちんと守ることが必要です。

   ご相談内容を見ると、会社と派遣スタッフ双方のエゴがぶつかりあっているようにも思えます。派遣スタッフの受け入れは、需要の増減に応じて労働力を調整する方法として有効ですが、その分、リスクが伴います。信頼できる派遣会社を選び、業務内容や条件等について十分に打ち合わせをしましょう。その上で派遣スタッフには、契約の範囲内で働いてもらうと割り切ることも必要です。「なるべく責任を負いたくない」「柔軟な指示命令には応えられない」という人を含めて、多様な働き方を尊重できなければ、直接雇用での人材調達を進めるしかありません。

   なお、業務繁忙などを理由に派遣スタッフの有給休暇の「時季変更」をする判断は、派遣会社で行います。どうしてもその人が休まざるをえない場合には、派遣会社に代わりの人員を派遣してもらうよう決めておきましょう。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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