東芝は2010年8月10日、パソコンなどの機器からハードディスク装置を取り外すと、自動的に記録データを読めなくする技術を世界で初めて開発したと発表した。稼働中の機器から装置を不正に取り外すと、電源供給が絶たれると同時に「暗号鍵」を消去して記録データを解読不能にする。
「足引っかけてパー」のリスクも
この技術は、国内外でハードディスク装置の盗難による情報漏えいが発生していることを受けて開発された。機器のリース期間終了や廃却の際にも、ディスクを物理的に破壊したり別データを上書きしたりする必要がなくなる。
東芝では08年5月に、府中事業所で原子力発電制御システムの設計データを保管していたハードディスク装置が盗まれたことがあったが、このような事件に遭っても情報漏えいを防ぐことができる。
また、リース担当が1台ずつデータを上書きしたり、情報漏えいの不安を抱えながら外部業者にデータ消去を依頼したりする手間もなくなる。
確かに便利そうな技術だが、思わぬ拍子に大事なデータをすべて「忘れ去る」ことは起こらないのだろうか。ネット上には「エアコンつけてブレーカー落ちたら消えちゃうのか」「うちの猫がよく電源落とす」「コンセントに足をひっかけるどじっ子に注意だな」などの声も上がっている。
東芝の広報室によると、使い方によってはそのようなリスクはあると認めた上で、電源オフ時に全データを無効化するのではなく、「無効化せずに暗号化状態で保護する」領域を分けて設定するなどして、用途に応じてうまく使って欲しいという。
「一例ですが、オフィスの複合機を使って機密情報をスキャンしたり印刷したりすると、機器に一時データが残って漏えいのリスクが生じます。電源オフ時に一時データのみを消去し、それ以外のデータを保護するといった活用の仕方も考えられます」
ネット上には、「意図しない消去に備えて自動バックアップとらなくちゃ」という人に、「それ盗まれたらどうするの?」と突っ込む声も。「俺が死んだら家のパソコンの中身を読めなくしてくれるサービスがあったらなあ」という人もいた。