電子書籍は普及しないんじゃないかなと思う理由

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   世の中の子どもたちは夏休みに入っています。

   ふだんは見かけない時間帯に、子どもたちの姿をJRや地下鉄で目にすることも増えました。

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モバイルは「通話もできるゲーム機」になった

ぷよぷよ、テトリス、マージャン、位置ゲー
ぷよぷよ、テトリス、マージャン、位置ゲー

   先日、取材の途中で地下鉄に乗りました。

   空いている車内の連結部付近に親子連れ。

   子ども二人は座り込んでなにやらはしゃいでいて、時々母親がケータイから目を離さずに操作しつつ、「騒がないで!」と注意しています。

   よく見ると、母親は釣りゲーに夢中になっていたのでした。

   別の日、今度は混雑する山手線。

   出入り口付近に、ベビーカーの中ですやすやと眠る幼子と若夫婦。夫婦は色違いでおそろいのデザインがされたカバーをつけた、おのおののiPhoneで、やはりゲームをしていました。

   父親がiPhoneで、子どもが携帯ゲーム機で、それぞれゲームをやっていた親子もいました。

   ぷよぷよ、テトリス、ビリヤード、スロット、マージャン、位置ゲー…。

   サラリーマンまで拡大すると、実に多くの人が車内や喫茶店などで、ケータイやiPhoneを使ってゲームをやっています。

   もはや、「ゲームもできる通信端末」というより、「通話もネット接続もできるゲーム機」といったほうがいいぐらいの趣きさえある。

「子ども部屋」における活字の優先順位は

   もちろん、ゲームをやるのが悪いというのではありません。

   ゲームを部屋の中から街中へ解放したITの進化には、瞠目すべきものがあると思っています。

   ただ、あまりにゲームに夢中になるのもどんなもんよ、という老婆心がひとつ。

   もうひとつは、うわさの電子書籍について。

   いくら電子データ化しても、端末=ケータイやタブレットコンピュータでゲームがプレイできたり、テレビ(ワンセグ)を視聴できるとなると、「活字を読む」という行動自体の優先順位がなかなか上がらないだろうな、と。

   結局は、本もあるがテレビもPCもゲーム機もある子ども部屋で起きていること、つまり、活字を読むよりゲームやテレビやネットのほうが楽しいということが繰り返されるのかな、などと思いをめぐらせたのでした。

井上トシユキ


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井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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