業務の効率的な運営に不可欠な、インターネットやパソコンの利用。ある調査によると、従業員の「うっかりミス」による情報漏えいに対し、企業が懲戒解雇を含む厳しい姿勢で臨んでいる実態が判明した。これには働く人の側から「処分が重過ぎる」と異論も上がっている。
裁判なら不当解雇で敗訴のリスク
この調査結果は、労務行政研究所が2010年6月30日に発表したもの。東証一部上場企業を含む199社が回答している。
それによると、「電子メールの誤送信」によって社内機密データを漏えいさせた場合、85.4%の会社が「社内処分の対象とする」と答えている。
処分の内訳は、「譴責(始末書提出)」が38.7%でもっとも多く、次いで「減給」が18.6%、「降格」が11.1%が続いた。「懲戒解雇」と答えた会社も3.0%(6社)あった。
ネット上には、「ミスした人が責任を取るのは当然のこと」「厳しくしないとおバカさんが迷惑をかける」という声もあったが、
「使わないことが許されない状況で責任だけ取らせるな」
「想定されるリスクを受容できないなら、(会社は)それなりの対策を取るか、そもそも許可を出すべきではない」
という声も上がっている。
一方で、処分が甘すぎるのでは疑われるような例も。上司のパスワードを使って、アクセス権のない社内業務データに不正にアクセスしてコピーしたといった、悪質で深刻な場合でも、懲戒解雇とする会社は28.6%にとどまり、譴責と答えた会社は14.6%もあった。甘い処分で済ませる会社には、個人情報を提供するのが怖くなる。
みらい総合法律事務所の辻角智之弁護士は、情報漏えいを許さない会社であることをアピールするために、社内処分を厳しくする考えはありうるとしたうえで、うっかりミスで解雇はやりすぎだと指摘する。
「故意でない情報漏えいで会社に損害を与えたとしても、その責任をすべて従業員が負わされることはありませんし、会社の内部管理責任も問われます。悪質性の低いミスを理由とした解雇は、裁判になれば会社が不当解雇で敗訴するリスクが高いでしょう」