仙台市の杜の都(もりのみやこ)信用金庫では、来年3月までの9か月間、職員1人あたり2000円の「燃料代」を支給する。全30店舗に人数分を一括で支給し、各店では「総決起大会」などの懇親会に利用するという。
杜の都信金は、ここのところ業績が好調。2010年3月期決算で、本業の儲けが東北の信金トップとなった。中期経営計画の達成に向けて、現場の職員同士のコミュニケーションを図り、現場のモチベーションを高めることをねらう。
「大きな会議の後の懇親会は当たり前」
このニュースを見たネットユーザーからは、「飲みニケーションとか強要すんな」「好きなやつらだけでやってろ」といった声が一斉に上がった。中堅メーカーに勤める40代男性営業マンのAさんは、この強い拒否反応に首を傾げる。
「コンピューターで仕事が完結する人たちが反発しているんですかね。営業では普通のことなんですけど」
Aさんの会社の「総決起大会」は、期の営業計画の進捗状況と、キャンペーンの売上目標や営業戦術を確認する場だ。目標は課や個人にまで割り振られるが、通常は達成が簡単ではない高いレベルの場合が多い。
「でも達成できなければ、会社は成り立っていかないし、自分の評価にも関わる。だから、達成には何が足りないのか、本部や開発などの他部署に何を要求すべきか真剣に考えるし、ときには激しい議論にもなる」
会議が終わったあとには、懇親会を開くのが恒例だ。議論をした相手と続きの話をすることもあるが、基本的には「いろいろ問題も残ってはいるが、達成に向けて力を合わせて頑張ってみよう」という段階なのだそうだ。
杜の都信金の取組みについても、「単なる飲み代じゃなくて、そういう会合の場を設けるなら、会社が懇親会の費用を一部負担するという話でしょう。うちでは支店の経費を使っていますけど、ありがたいことなんじゃないですか」と評価する。
懇親会出たくない人は強要しない
また、飲食をともにする機会を持つことで、その後のコミュニケーションを円滑にする効果もあるという。お互いに言いたいことを言い、かつ受け入れあうには、ベースに「信頼関係」があることが望ましい。
「会議では、お互いの立場から物を言いますが、懇親会の場では、会社をどうしていこうとか、何が問題なのかについて、立場を超えて話が及ぶものです。そういう話ができる間柄が存在することが、仕事を頑張る原動力にもなるわけです」
スポーツ好きなAさんは、サッカー南アW杯で善戦した日本代表のエピソードを引く。W杯を前に、岡田監督は南アの食事会場について、「もっと一体感が出るような雰囲気を作れないか?」と注文をつけたという。
一勝もできなかったドイツW杯では、選手たちは中田英選手のグループと、それ以外のいくつかのグループに分かれ、食事も別々に食べていたと報じられていた。食事だけが勝敗を決めるわけではないが、結果から見ると軽視できないかもしれない。
もっとも岡田監督は、普段は練習時間以外で選手と食事に行ったり、飲みに行ったりはしないらしい。Aさんも、懇親会は仕事そのものではなく、けじめを持って切り分けをすべきだという。
「ネットでときどき目にする『残業代払え』ってのは、どうですかね。どうしても出たくないという人がいれば、うちの会社では強要しませんけど。飲めない人に無理強いするオヤジも見たことないですし。まあ、懇親が目的なんだから、会社の上下関係とかをあまり持ち込みすぎるな、というのは確かにそうですけどね」